「アクチュアリー試験に受からないと、営業に飛ばされるのでは…?」 「もし正会員になれなかったら、キャリアは終わり?」
こうした不安を抱える就活生や若手社会人は少なくありません。 しかし、実際の現場を見てみると、「アクチュアリー試験に受からない=終わり」ではないのが現実です。
この記事では、アクチュアリー正会員になれなかった場合の実態と、それでも安心してキャリアを築ける理由を、実例を交えて解説します。
試験に受からないと異動になるのか、というご質問には、YouTubeでも同じ内容でお答えしています。読むより聞くほうが早いという方は、こちらもご覧ください。
結論:受からない期間が続いても、アクチュアリーの仕事は続けられます
アクチュアリー試験に受からない期間が続いても、アクチュアリーとしての仕事とキャリアは続けられます。理由は2つあります。1つは、アクチュアリーの業務の大半が、正会員の資格がなくても担当できるものだからです。もう1つは、採用する側が見ているのが、資格そのものよりもアクチュアリーとしての実務経験だからです。
たしかに、一部の会社には「何年以内に準会員・正会員にならなければアクチュアリー部門以外へ異動」というルールが置かれています。ただ、私がこれまで多くのアクチュアリーを見てきた実感としては、そのルールが文字どおり運用されている例は多くありません。その理由は、次の章で説明します。
先に申し上げておくと、私自身も「社会人5年目までに正会員になれなかったら別の道に進む」と決めて勉強していました。受からない時期の不安は、私も同じように抱えていたものです。ここから書くのは、その立場から見えている実態と、勉強をどう立て直すかという話です。
なお、これからアクチュアリーを目指す段階で、資格の取り方や進路の選び方を知りたい方は、アクチュアリーになるには|大学・文系の疑問に正会員が回答のほうが役に立つと思います。この記事は、すでに受験している方、すでにアクチュアリーとして働いている方に向けて書いています。
アクチュアリー試験に受からないと終わり?よくある不安とは
「営業に飛ばされる」って本当?
就活生の間でよく聞かれるのが、「アクチュアリー試験に落ち続けると営業に飛ばされる」という噂です。 確かに、一部の企業では人事ローテーションの一環として、アクチュアリーが営業部門や他部門に異動するケースもあります。
しかし、実際には「アクチュアリー試験に受からないから異動になる」という単純な構図ではありません。その人の適性を見たうえで、アクチュアリー部門以外に異動となることがほとんどです。
実際、多くの企業では、正会員でなくてもアクチュアリー業務を継続して行える体制が整っているように感じます。理由はシンプルで、アクチュアリーの業務の大半は正会員資格がなくても遂行可能だからです。 保険計理人や年金数理人などの法的資格を要する一部業務を除けば、試験合格の有無にかかわらず、数理スキルを活かして働くことができます。
この「資格」と「仕事」の関係は、これから目指す段階の方にも知っておいていただきたい点です。正会員になるまでの順序とあわせて、アクチュアリーになるには|大学・文系の疑問に正会員が回答で解説しています。
企業がアクチュアリー試験結果をどう見ているか
企業にとって重要なのは「アクチュアリーとしての実務力」と「学ぶ姿勢」です。 試験結果は一つの指標ではありますが、それがすべてではありません。
実際、アクチュアリー業界では、研究会員(試験途中の段階)でも専門的な業務を担当している人が多数存在します。 企業によっては、研究会員がアクチュアリー部門の部長や役員を務めるケースもあり、試験合格の有無だけで評価されるわけではないのです。
社内規程の「5年・10年ルール」は運用されているのか
会社によっては、新卒採用の時点で総合職のなかにアクチュアリーのコースが分かれていることがあります。そうした会社では待遇の面でもコースの区別があるため、「5年以内に準会員、10年以内に正会員にならなければアクチュアリー部門以外へ異動」といったルールが置かれていることがあります。受験生の間で5年ルール・10年ルールと呼ばれているものです。なお、この記事の後半に出てくる「自分で期限を決める」という話とは別で、ここでは会社の規程の話をしています。
ただ、このルールが文字どおり運用されている例は、私が見てきた範囲では多くありません。理由は単純です。10年にわたってアクチュアリー業務を担ってきた人を他部門へ動かせば、その人は転職していきます。会社にとっては、育てた人材を失うほうが痛いからです。ルールとして書かれていることと、実際に起きていることは、同じとは限りません。
ですので、いま科目が思うように進んでいない方も、社内規程の文面だけを見て結論を出す必要はありません。ただし、会社ごとの差は確かにあります。昇格の要件に正会員を置いている会社では、資格が取れないことが役職や待遇に影響することもあります。自分の勤め先がどちらに近いのかは、社内にいる研究会員・準会員の先輩が実際にどういうポジションにいるかを見るのが、いちばん確かな手がかりになります。
受からない原因を、3つに切り分ける
「受からない」とひとまとめにして考えていると、手の打ちようがなくなります。私が受験生の相談を受けるときは、原因を勉強量・勉強のやり方・科目の選び方の3つに切り分けます。どれが効いているかで、次にやることが変わります。
①勉強量:確保できている時間を、まず数える
はじめに、1週間で実際に勉強できている時間を数えてみてください。数えずに「足りていない気がする」と考え続けるのが、いちばん消耗します。参考までに、私は試験直前の時期には平日5時間、休日13時間ほど勉強していました。これは直前期の話で、1年を通してこの量という意味ではありませんが、1次試験の科目を仕上げるにはまとまった時間が必要です。仕事の繁忙期と試験前が重なる方は、勉強時間を無理に増やすより、受ける科目数のほうを先に調整するという判断もあります。いつから始めるかについてはアクチュアリー試験の勉強開始はいつから?にまとめています。
②勉強のやり方:合格の基準を数字で置く
時間は取れているのに受からない場合は、やり方のほうを疑います。私が目安にしているのは、過去問15年分を2時間半で9割取れる状態です。教科書を読み終えた、問題集を1周した、という手ごたえではなく、この基準に対してどこまで届いているかで測ってください。届いていない場合は、解き方を思い出せるかどうかの段階で止まっていることが多く、そこから先は繰り返しの回数の問題になります。過去問の使い方は【アクチュアリー1次試験】過去問の使い方で詳しく書いています。
③科目の選び方:順序を見直す
まだ1科目も合格していない段階でつまずいている場合は、科目の順序そのものを見直してみてください。私は、理系の方には数学、文系の方には会計・経済・投資理論(KKT)から入ることをおすすめしています。得意な分野で1科目取ると、試験の水準が体感として分かり、その後の計画が立てやすくなります。なお、2027年度には試験制度の改正があります(アクチュアリー試験の制度改正)。これから科目の計画を立て直す方は、あわせて確認してください。
受からない時期の立て直し方
切り分けができたら、まずは今年受ける科目数を決め直します。確保できる勉強時間から逆算して、仕上げきれる数にとどめるほうが、結果としては早く進みます。同時に多くの科目を追いかけて、どれも基準に届かないまま本番を迎えるのが、いちばんもったいない形です。
次に、締め切りを外から作ります。ひとりで勉強していると、仕上がりの判断がどうしても甘くなります。当社では、月に1回の無料オンライン勉強会(月1勉強会)やアクチュアリー模擬試験を、この「外からの締め切り」として使っていただいています。本番と同じ時間で解いてみると、届いていない部分がはっきりします。
そのうえで、いつまで受け続けるかを自分で決めておくことをおすすめします。私の場合は社会人5年目までと決めていました。期限を決めると諦めが早くなるように見えますが、実際には逆でした。「だめだったらこうする」が決まっているほうが、いま目の前の勉強に集中できます。この考え方は、次の章でもう少し詳しく書きます。
気持ちが続かない時期の過ごし方については、アクチュアリー試験へのモチベーションを維持する6つの方法も参考にしてください。2次試験に進んでいて手が止まっている方は、2次試験の勉強方法のほうが近い話になると思います。
アクチュアリー試験に受からなくても活躍できる理由
正会員でなくてもできるアクチュアリー業務とは
保険会社やコンサルティング会社のアクチュアリー部門では、保険料率の算出、責任準備金の評価、ERM(リスク管理)など、幅広い業務があります。 これらの多くは、アクチュアリー試験の途中段階でも十分に担当できますし、実際、アクチュアリーが正会員になる前に実務経験を積むことがほとんどです。
むしろ、実務での経験を積むことで、「理論を現場で使える力」が身につき、結果的に試験勉強にも役立つケースも少なくありません。
研究会員でも評価されるケースと実例
ある生命保険会社では、研究会員として10年以上勤務し、アクチュアリー部門のマネージャーを務めている方もいます。 このように、実務の能力と人間的信頼があれば、資格がすべてではないという風土がある会社もあります。
一方で、アクチュアリー正会員がアクチュアリーポジションでの昇格要件としている会社も一部あります。もし、こうした会社に務めている場合には、正会員になることができなかったら、待遇や役職が冷遇されてしまうこともあるでしょう。
しかしながら、アクチュアリー業務経験者は転職市場でも高く評価されます。 「アクチュアリー試験に受からない」と悩む人でも、アクチュアリーの業務経験を積めば、転職して年収を上げることは可能です。そのため、アクチュアリーの資格が取れなくても、キャリアの幅は特段問題ありません。
資格以外で評価される力を、意識して積む
私が採用する側にいたときも、いまアクチュアリーの転職支援をしている立場でも、いちばん見ているのはアクチュアリーとしての実務経験です。どの分野を、どこまで自分で回してきたか。ここを自分の言葉で説明できる方は、試験がどの段階であっても評価されます。
加えて、試験以外に身につけておくと効いてくる力があります。ひとつは説明する力です。2次試験の所見を書く練習を通して伸びる力ですが、資料を作って人に説明する日々の仕事のなかでも育ちます。もうひとつは、アクチュアリーの周辺にある知識です。資産運用、会計(簿記)、データ分析、英語は、いずれも実務でそのまま使います。私自身、試験勉強が一段落した時期にこのあたりを勉強しました。何から手をつけるかはアクチュアリー試験のその先へ【おすすめ学習内容】に書いています。
試験が進まない時期は、勉強以外のことに手をつける余裕がないと感じるかもしれません。それでも、実務の幅を広げたことは、試験の結果にかかわらず市場価値として残ります。評価されるものが試験だけではない、という点は、この仕事の救いのある部分だと思っています。
もし異動になっても安心!キャリアを続ける3つの道
もし、資格試験に受かることができず、異動となってしまった場合に、アクチュアリーとして働きたいという意向がある場合の選択肢をご説明します。
①社内異動後に再挑戦する
一時的に営業やオペレーション部門へ異動したとしても、それは「終わり」ではありません。 異動先で得た経験をもとに、再びアクチュアリー業務へ戻ることも可能です。しかし、同じ会社での異動となると最低2~3年は異動できないケースが多いので、アクチュアリーポジションで働くには時間がかかってしまいます。
②転職でアクチュアリー職を継続する
アクチュアリー経験を持つ研究会員や準会員でも、他社では一定の需要がある場合がほとんどです。アクチュアリー正会員でないから転職できないわけではなく、きちんとした実務経験があれば、アクチュアリーとして転職することは可能です。
私自身、アクチュアリー専門の転職支援をしていますが、研究会員や準会員の方の転職もお手伝いしています。30代・40代でも、アクチュアリーの実務経験があれば、アクチュアリーのポジションでの転職は現実的な選択肢です。
選考で確認されるのは、担当してきた業務の内容と、それをどう説明できるかです。科目合格の数は、その材料のひとつにすぎません。進め方はアクチュアリーの転職ガイド、エージェントの選び方はアクチュアリーに強い転職エージェントの選び方にまとめています。
③アクチュアリー経験を活かして他職種へ
アクチュアリー試験に受からなかったとしても、数理的思考力やデータ分析力を武器に、資産運用や経営企画、リスク管理、データサイエンスなどへのキャリアチェンジする道もあります。
いずれの選択肢でも、アクチュアリー試験の勉強経験が無駄になることはありません。
「終わりを決める」ことの意味とキャリア形成への効果
5年ルールを設けた先輩アクチュアリーの体験談
私の場合には、「社会人5年目までに正会員になれなかったら諦める」と決めていました。 この「終わりを決める」という考え方は、一見ネガティブに見えますが、実はモチベーションを高める効果があります。
期限を設けることで、日々の努力に集中でき、限られた時間を最大限に活かす意識が芽生えるのです。
撤退ラインを決めることで得られる集中力と覚悟
もちろん、すべての人が同じタイミングで正会員になる必要はありません。 重要なのは、自分なりの「目標設定」と「覚悟」を持つことです。
アクチュアリー試験は長期戦です。 終わりを決めることで、逆に試験との向き合い方が明確になり、途中でブレにくくなるというメリットがあります。
アクチュアリー試験に受からないと感じたときに考えたいこと
努力が報われるまでの時間差を理解する
アクチュアリー試験は長期戦です。日本アクチュアリー会は、資格取得までの平均的な受験年数を、入会から準会員まで約5年、正会員まで約8年としています(出典:日本アクチュアリー会「受験に関するFAQ」)。さらに、2026年3月に公表された2025年度の試験結果では、過去5年間の実績にもとづく正会員資格取得までの平均年数は9.0年と示されています(出典:同「2025年度資格試験結果について」)。数年かかるのがふつうの試験です。だからこそ、焦らず、自分のペースで積み上げていくことが重要です。
試験に受からない時期があっても、それは「努力が報われるまでの助走期間」だと考えましょう。
「受からない=終わり」ではない、次の一歩を踏み出す勇気
試験に落ちたときこそ、自分のキャリアを見つめ直すチャンスです。 社内外のアクチュアリーと交流したり、転職エージェントに相談したりすることで、新たな可能性が見えることもあります。
「アクチュアリー試験に受からない」経験をした人ほど、柔軟な視点を持ち、広い視野でキャリアを築ける可能性があります。
よくある誤解
「正会員でなければアクチュアリーの仕事はできない」
保険料の計算や責任準備金の評価といった業務は、正会員の資格がなくても担当できます。正会員であることが前提になるのは、法令にもとづく保険計理人のような立場です。アクチュアリーの業務の範囲はアクチュアリーの業務内容~正会員が解説~で整理しています。
「受からなければ異動になると決まっている」
決まっていることではなく、会社ごとの運用の問題です。ルールとして置かれている会社はありますが、そのまま運用されている例は多くありません。一方で、昇格の要件に正会員を置いている会社もあります。文面ではなく、社内の先輩の実例で判断してください。
「正会員でなければ転職できない」
これは事実と違います。研究会員・準会員の方の転職も日常的に成立しています。見られているのはアクチュアリーとしての実務経験で、資格はその一部です。
「受からないのは、向いていないからだ」
原因の多くは、この記事で書いた勉強量・やり方・科目の選び方のどこかにあります。適性そのものを疑う前に、そこを切り分けてみてください。そのうえで、この仕事の向き不向きを考えたい方はアクチュアリーはやめとけ~正会員が解説~も参考になると思います。
まとめ:アクチュアリーの道は一つではない
正会員を目指しつつも、自分のペースで成長しよう
アクチュアリー正会員資格は、確かに価値の高い目標です。 しかし、それが唯一のゴールではありません。 試験に受からない時期があっても、実務経験を積み、学び続ける姿勢こそが最も大切です。
転職やキャリア相談を活用して、安心して挑戦を続けよう
もし今後の方向性に悩んでいるなら、キャリア支援サービスに相談してみるのも手です。アクチュアリーとしての経験やスキルを活かせる道は、試験の結果にかかわらず残ります。ひとりで抱えているより、実際の求人や他の方の事例を見てから考えたほうが、判断しやすくなるはずです。
まずはアクチュアリー専門の転職エージェントに無料登録をして、お気軽にご相談ください。

本記事がアクチュアリー試験に悩まれている方の参考になれば幸いです。
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この記事の執筆者
松岡 / 日本アクチュアリー会 正会員(FIAJ)
株式会社ACEプロフェッショナル 代表取締役
アクチュアリーの転職支援・試験対策指導に従事


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