アクチュアリーの業務内容~正会員が解説~

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アクチュアリーの仕事ってなんですか

Donald
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アクチュアリーと言っても、
やっている内容は人によって大きく違います。

そこで今回は「アクチュアリーの業務内容」

について広く浅く話ができればと思います

はじめに

アクチュアリーは、保険業界や金融分野において不可欠な役割を果たす保険数理の専門家です。数学や統計学の知識を駆使し、保険料設定、決算、リスク管理、資産運用など幅広い分野で活躍します。

今回は実際に正会員として働く私が、アクチュアリーの多岐にわたる仕事について、広く浅く解説します。また、法的にアクチュアリーが行うことが求められている「独占業務」について、解説します。

筆者自身は商品開発周りの経験が中心なので、解説する仕事の中には、実際に経験していない仕事もありますが、一緒に働いているアクチュアリーの話などを参考に記載してます。
記載のない業務や反対意見があれば、是非コメントで教えてください。

1.アクチュアリーの業務内容

アクチュアリーは、保険分野を含むさまざまな領域で仕事をしています。以下に、それぞれの領域でのアクチュアリーの業務内容を紹介します。主な会社や部署名を記載しますが、私の経験則であり、特に会社によって部署のネーミングは異なるので、ご注意ください。

保険料設定(プライシング)

主な会社や部署:保険会社の商品部・商品数理部

主な業務内容:新商品の発売や既存商品の改定に伴い、保険料を適正に設定します。
純保険料の設定では、加入が想定される母集団の発生率を見積もります。また、近年の金利環境や標準利率、当該商品の想定キャッシュフローなどを鑑み、予定利率を設定します。
付加保険料の設定では、収益性が十分に確保されているかを検討し、同時に代理店の手数料も設定します。

決算業務

主な会社や部署:保険会社の計理部・経理部・数理部

主な業務内容:年次決算や四半期決算において、アクチュアリーは責任準備金の評価などを行い、当期の財務資料を作成し、経営陣にレポートします。
保険計理人や計理人をサポートする人は、利源分析など、金融庁への提出資料を作成します。

経営企画

主な会社や部署:保険会社の経営企画部

主な業務内容:中期経営計画などの経営戦略の立案。特に、アクチュアリーは、プライシングや財務、リスク管理などの視点から経営戦略の立案に関わります。
また、会社の契約ポートフォリオ、経営計画、将来の経済状況などを考慮し、保険会社の将来収支を予測し、経営戦略の精緻化や修正に関わることもあります。

リスク管理

主な会社や部署:保険会社や銀行のリスク管理部

主な業務内容:会社がさらされているリスクを特定、評価し、最適な対応策を検討します。これにより、会社経営の安定化を目指します。
統合的リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)の概念では、全社的なリスク文化の構築が好ましいとされており、経営陣を始め全従業員のリスク意識を高めるための啓蒙活動を行うことがあります。

資産運用

主な会社や部署:保険会社の資産運用部

主な業務内容:保険会社の資産ポートフォリオを最適化し、リスクとリターンのバランスを保ちます。特にアクチュアリーは負債サイド(責任準備金)について、知識が豊富であることから、資産運用部門にアサインされることがあります。
過去の逆ざやの反省から、資産負債管理(ALM:Asset and Liability Management)に保険会社は注力しており、資産運用とリスク管理の両方の知見をもったアクチュアリーが必要とされています。

営業職員給与・代理店手数料規定の作成

主な会社や部署:保険会社の営業企画部・商品部・商品数理部

主な業務内容:営業職員や代理店の報酬制度を考案・設計して、保険会社利益の最大化を目指します。
銀行窓販などや乗合代理店では、他社の手数料水準が売上に大きく影響するので、他社動向について、日頃からのリサーチが必要です。
また、手数料の変更は、商品ごとの収益性に関わる部分なので、プライシング部門や収益管理部門との入念なコミュニケーションが必要です。

団体年金

主な会社や部署:信託銀行・保険会社の団体年金部

主な業務内容:団体年金制度の設計と運用に関与し、将来の年金支払いに備えます。また、アクチュアリー正会員で一定の要件を満たすと、年金制度等のプロフェッショナルである年金数理人になることができます。詳しくは年金数理人会のHPをご覧ください。

データサイエンス

主な会社や部署:コンサルティング会社・保険会社のDX推進部や商品部等

主な業務内容:予測モデルの作成やビジネス戦略の立案など、データサイエンスを活用する業務全般。アクチュアリーとしてのデータ分析とモデリングのスキルを活かして、データサイエンティストのように働く人もいます。
保険会社の外からデータサイエンティストを雇うこともありますが、プログラミングや機械学習に精通し、かつ保険会社内の事情を理解しているアクチュアリーは、データサイエンティストとして重宝されます。
また、データサイエンスと医療統計などの医学的知見を活かして、製薬会社や医療機関のデータサイエンティストにアクチュアリーから転身するもいます。

コンサルティング

主な会社や部署:コンサルティング会社・再保険会社

主な業務内容:コンサルティングといっても色んな分野がありますが、アクチュアリーが関わるものとしたら、IFRS17などの新しい会計基準の導入などが多い印象です。
他にも
・団体年金
・リスク管理支援
・商品開発支援
・経営戦略の立案
など、色んな形で、保険会社等の支援を行っています。

監査

主な会社や部署:監査法人

主な業務内容:保険会社等の財務情報を監査し、正確性を担保します。また、企業買収のデューディリジェンスにも関与することがあります。
特に監査法人の方の話を伺うと、アクチュアリーは責任準備金の評価やIFRS会計の監査に携わることが多い印象です。
余談ですが、たまに公認会計士とアクチュアリーのダブルホルダーの人がいます。みんな超優秀です。

再保険

主な会社や部署:再保険会社

主な業務内容:保険会社の保険会社である再保険会社にリスクを転嫁する再保険契約を評価します。再保険の引受条件などを検討することが、主にアクチュアリーの役割のようです。

海外事業部門

主な会社や部署:保険会社の海外事業部

主な業務内容:海外子会社の保険会社の決算状況の確認や、海外におけるマーケット調査や新規事業の立案などに携わります。特にアクチュアリーは、その国における経営環境や国際会計基準の知識を活かして、リスク評価や戦略立案に携わります。

2.アクチュアリーの独占業務

法的に定められたアクチュアリー資格を取得した人だけが行える業務(いわゆる「独占業務」)があります。具体的には、「保険計理人」や「年金数理人」の2つです。

保険計理人

保険計理人は保険料や責任準備金の算出に関する業務や保険会社全体の健全性を確認する業務を行うことが求められており、「保険業法」において保険会社は保険計理人を選任することが義務付けられています。

保険計理人になるためには、日本アクチュアリー会の正会員、かつ保険会社で保険数理に関する業務に5年以上従事する等の条件を満たす必要があり、専門知識と業務経験の両方が求められます。

年金数理人

厚生年金基金、国民年金基金および確定給付企業年金から厚生労働大臣に提出する「年金数理に関する書類」については、適正な年金数理に基づいて作成されていることを確認し、記名をしたものでなければならないと「確定給付企業年金法」に規定されています。

年金数理人になるには、以下の4要件をみたし、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。
①知識:日本アクチュアリー会資格試験もしくは日本年金数理人会試験の全科目に合格等したもの
②経験:年金数理業務に5年以上従事したもの
③責任者たる経験:年金数理業務の責任者として年金数理業務に2年以上従事したもの
④社会的信用:十分な社会的信用を有するもの

信託銀行などでは、年金数理人として働く方が多いので、独占業務を行う機会は多い方かと思います。しかし、保険計理人として独占業務を行う人は少ないのが実態です。保険計理人は、1会社1人なので、実際に保険計理人として働く人は少ないです。

こうしてみると、「公認会計士」や「税理士」などの他の資格と比較すると、独占業務の数が圧倒的に少ないので、資格としての優位性は一見低そうに見えます。しかしながら、統計的知識や保険数理、年金数理、リスク管理等の専門知識を必要とする業務は、最初に解説したとおり、独占業務以外にもたくさんあり、アクチュアリーの資格を有することは、そうした業務に携わる知識を有していることを示すことにつながるので、信頼度、説得力の増強、キャリア開発などにおいても、かなり有利に働きます。

おわりに

アクチュアリーは、金融業界において数学的な専門知識とリスク管理等の能力を有する専門家です。アクチュアリーにより、企業は経営を行うことができ、お客様に信頼性のある保険や年金サービスを提供できます。

また、保険計理人や年金数理人になるには、アクチュアリーとしての資格が必要であると解説しました。今回の記事が、アクチュアリーを目指している方の参考になれば幸いです。

また、日本アクチュアリー会のHPにおいても、アクチュアリーの活躍フィールドとしてまとまっているので、ぜひそちらもご覧ください。

AC育成塾では、みなさまのアクチュアリーとしての成功の支えとなれるように、色んなコンテンツをやっていきたいと思っていますので、これからも一緒に頑張っていきましょう!

最後までご覧いただきありがとうございました!

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