アクチュアリーという職種は、保険会社やコンサルティング会社でデータ分析やリスク評価を行う専門職です。近年はテレワークの普及に伴い、「アクチュアリーは在宅勤務できるのか?」「フルリモートで働けるのか?」という質問をよくいただきます。
本記事では、アクチュアリーの在宅勤務(リモートワーク)の実態や出社率、働き方のメリット・デメリットを解説し、今後のキャリア形成に役立つ情報をお届けします。
同じ内容をYouTubeでも解説しています。読むより聞くほうが早いという方は、こちらもご覧ください。
アクチュアリーは在宅勤務できるのか?
アクチュアリー業務は、データ分析やリスク評価など、基本的にパソコンさえあれば完結する業務が多く、在宅勤務と相性が良い職種です。特に計算業務やレポート作成は在宅などのオフィス以外でも支障なく行えるため、リモートワークが導入されている企業も増えています。
一方で、プロジェクトの進行や会議で打ち合わせが多く、チーム連携が必要な場面では、出社が求められる場合もあります。そのため、アクチュアリーの在宅勤務は「完全フルリモート」というよりも、「一部出社を伴うハイブリッド型」が多いのが現状です。
結論から申し上げると、アクチュアリーは在宅勤務ができる職種です。フルリモートで働くことも、一部の会社では可能です。ただ、私がアクチュアリーの知り合いから聞いている話と、転職の相談で伺っている範囲では、実際に多いのは出社と在宅を組み合わせたハイブリッド型の働き方です。
地方に住みながらアクチュアリーとして働きたい、というご相談をいただくことがあります。日本でアクチュアリーとして働く場合、就職先は東京の会社が一般的で、一部に大阪もあります。そのため、地方に住みながら働くことは簡単ではありません。ただ、不可能でもなく、関西や東北のご自宅で働きながら、たまに東京へ出張してくるという方もいらっしゃいます。
余談ですが、私自身はフルリモートは少し寂しいので好みではありません。出社して同僚と話す時間も欲しいので、出社と在宅が半々くらいが理想だと思っています。そのため、在宅勤務は日数が多ければ多いほど良いというものではありませんので、自分がどのくらい在宅したいのかを先に決めておくほうが、会社選びで迷わなくなります。
在宅勤務・リモートワークの実態と出社率
在宅勤務の実態
実際の在宅勤務日数は会社や部署、役職によって大きく異なります。以下は、私がアクチュアリーの知り合いから聞いている話と、転職の相談で伺っている範囲での目安です。公表された統計ではありませんので、相場感として受け取っていただければと思います。
- 中央値:週3在宅・週2出社
- 最大値:フルリモート(たまに東京へ出張する程度の出社)
- 最小値:週5出社(在宅勤務なし)
中央値で見ると、週3日を在宅、週2日を出社という方が多く、おおよそ半々だと思っていただければ近いと思います。ただ、これは職種全体の真ん中あたりの話です。同じアクチュアリーという職種でも、在宅の日数は人によってかなり違います。
この幅は、本人の希望よりも、勤め先と配属部署の事情で決まる部分が大きいです。
在宅率は時期によっても変動し、繁忙期やチームでの共同作業が必要な期間は出社率が上がる場合もあります。また、近年は企業の方針として「出社日数を増やす」動きも一部で見られます。
もし、地方移住等を考えているアクチュアリーの方は、フルリモート勤務が可能な企業を事前に確認しておくことが重要です。
在宅勤務日数はどう決まる?
実際には在宅勤務日数は、会社の方針の影響が強いですが、部署・役職・家庭事情・上司の考え方などによって決まります。たとえば、マネージャー職などで、対面での会議が多い場合には、出社頻度が高くなる傾向があります。逆に、個人作業が中心の若手アクチュアリーは在宅勤務しやすい場合が多いです。
もう少し具体的に申し上げると、効く順番はおおむね次のようになります。
1つ目は会社の方針です。経営陣や役員の方が出社したほうがよいと考えている会社は、出社中心の文化になります。反対に、成果を出せば在宅でよいと考えている会社では、在宅が進みます。
2つ目は部署の方針です。
同じ会社の中でも、この部は毎日出社、この部はリモートが多い、という違いが実際にあります。
ここには部長や上長の考え方が影響します。ですから、会社の制度を見るだけでは足りず、配属される部署の運用まで確認する必要があります。
3つ目は仕事の内容と年次です。若手のうちはデータ分析やExcel、プログラミングを書く仕事が多く、一人で手を動かす時間が長いので在宅にしやすいです。年次が上がってマネージャーになると、打ち合わせや調整が増えて、出社が増える方が多くなります。年齢が上がるほど出社は減りそうに思えますが、実際は逆になることが多いです。
ただし、Web会議が当たり前になっている会社であれば、マネージャークラスでもリモートで働けることはあります。結局は会社の文化によるところが大きいと感じています。
在宅にしやすい仕事と、出社になりやすい場面
アクチュアリーの仕事の中身は、データの集計と分析、Excelやプログラミングを使った計算、そして決算資料や経営会議に出す資料の作成が中心です。いずれもパソコンの中で完結するため、在宅と相性が良いのは確かです。そのうえで、1年のうちで出社が増えやすい場面は、だいたい決まっています。
決算の山場
私が見ている範囲では、生命保険会社や損害保険会社のアクチュアリーのうち、6〜7割ほどは決算の部署にいます。年度末の決算は、3月末で締まった数値を使って資料を作りますので、忙しくなるのは4月の後半から5月の前半です。加えて、保険会社は四半期ごとに決算を行う会社がほとんどですので、7月や10月にも山が来ます。この時期は打ち合わせや確認のやり取りが増えるため、出社が多くなりやすいです。
繁忙期の実態についてはアクチュアリーの残業時間は多い?平均残業時間や労働時間の実態を解説で詳しく説明しています。
プロジェクトの佳境
商品開発のように、プロジェクト単位で動く仕事は時期が一定ではありません。開発が佳境に入ると打ち合わせが立て込みますので、その期間は出社が増えます。逆に一段落すれば在宅に戻せます。
ですから、同じ人でも年間を通して在宅の日数は一定になりません。
入社直後と異動直後
新入社員がいきなり在宅勤務、というのは私が見ている範囲では多くありません。
教える側も対面で教えたほうが早いことがありますし、聞く側もわざわざチャットや電話をするのは負担です。
会社によってはリモートで教育しているところもありますが、私がメンターをしていたときは、出社してもらえるほうがありがたかったというのが正直なところです。
異動して仕事が変わった直後も同じで、慣れるまでは出社が増えると考えておくと、入社後のギャップが小さくなります。
在宅勤務の留意点
在宅勤務のメリット・デメリット
アクチュアリーが在宅勤務・リモートワークをする際のメリットとデメリットは次の通りです。
- 在宅勤務のメリット:通勤時間が不要、集中しやすい、自分のペースで仕事ができる、勉強時間の確保がしやすい(超重要)
- 在宅勤務のデメリット:質問しにくい等のコミュニケーション不足、情報共有が遅れやすい、運動不足になりやすい、集中力の低下をする人もいる
アクチュアリーが在宅勤務で気をつけること
上記メリットデメリットを踏まえて、在宅勤務中でも生産性を維持するためには、以下の工夫が必要です。
- 作業に集中できるワークスペースを整える。特にモニターの設置やWi-Fi環境はアクチュアリー業務を行う上でとても重要です。
- オンライン会議ツールを活用してこまめにチーム連携を取る。同僚のコミュニケーションをチャットやMTGなどで積極的に行う必要があります。
- スケジュール管理やタスク管理ツールで進捗を可視化する
- 運動習慣をつける
在宅勤務で気を付けることについては、下記記事も参考にしてください。
育児や介護と在宅勤務
在宅勤務がもっとも必要になるのは、保育園の送り迎えがある時期だと思います。私は第一子が生まれて育児をしてみて、これを実感しました。
自宅から保育園に子どもを送り、そこから電車で30分から1時間かけて通勤し、仕事をして、また同じ時間をかけて戻り、保育園に迎えに行って帰る。これを毎日続けるのは、想像するだけでかなり大変です。
保育園は自宅の近くを選ぶ方が多いので、在宅勤務ができれば、送り迎えの前後をそのまま仕事の時間に使えます。
フレックス制度と組み合わせると、もう少し融通が利きます。
朝早く起きて仕事をして、子どもを保育園に送り、戻って仕事をして、夕方に迎えに行き、帰ってからまた仕事をする、という組み方ができます。
フレックスの実態についてはアクチュアリーのフレックス制度の実態とは?働きやすさのカギを徹底解説で説明していますので、在宅勤務とあわせて確認してください。
余談ですが、育児をしてみて思ったのは、予定どおりに進まないことだらけだということです。
家事であれば、この時間に洗濯をしてこの時間に料理をする、と自分で決められます。
けれども、赤ちゃんがいつ泣くかは予想できません。
家を出る直前にミルクを欲しがることもあります。
そうした時間に通勤の往復が乗ってくるかどうかは、大きな差になります。
介護も同じです。家庭の事情がある場合に、在宅勤務を特別に認めている会社もあります。全社の制度として在宅勤務が広く認められていなくても、事情を上長に伝えることで運用として認めてもらえる場合がありますので、まずは相談してみることをおすすめします。
もうひとつ、アクチュアリー特有の事情としてアクチュアリー試験の勉強があります。
育児をしながらアクチュアリー試験の勉強を続けるのは、正直なところかなりきついです。
夜泣きで連続して眠れない時期は、集中力もモチベーションも保ちにくくなります。
その点で、在宅勤務は通勤時間がなくなる分、勉強時間の確保にも効きます。満員電車では本を開くこともできませんので、この差は小さくありません。
独身のうちは出社でも構わないと思っていても、結婚や出産を挟むと、在宅勤務とフレックスを選べる会社かどうかが効いてきます。
転職で在宅勤務を条件にするときに気をつけること
いま在宅勤務ができていない方にまずおすすめするのは、転職だけではなく社内で相談することです。
まずは上長や部長、先輩に在宅勤務をしたいと伝えてください。
育児や介護といった事情があれば、特別に認めてもらえる会社もあります。
事情がない場合でも、在宅のほうが集中できて仕事のパフォーマンスが上がる、という説明の仕方はひとつの手です。
そのうえで、今の会社では難しいという感触があれば、転職を視野に入れるのがよいと思います。転職で在宅勤務を条件にする場合、私がお伝えしているのは次の4点です。
会社単位ではなく、部署とポジション単位で確認する
在宅勤務の実態は、同じ会社でも部署によって違います。この部は毎日出社、この部はリモートが多い、ということが実際にあります。ですから、会社の制度を確認するだけでは足りません。
応募するポジションの部署が、いまどのくらい在宅なのかを聞いてください。面接や面談の場で、配属予定の部署の運用を具体的に尋ねるのが確実です。
制度としてあることと、実際に使えていることは違います
求人票や会社の資料に「リモートワーク可」と書かれていても、実際の運用はそれぞれです。
これは労働時間でも同じ構図で、会社の資料に載っている平均残業時間は全職員の平均ですので、アクチュアリーの部署の実態とは限りません(詳しくはこちら)。
在宅勤務も、全社の数字ではなく、自分が入る部署の運用を確認してください。
会社の方針は変わります
在宅勤務の日数は、経営陣や部門長の考え方に左右されます。
成果を出せば在宅でよいと考えている経営陣の会社では在宅が進み、出社したほうがよいと考えている会社では出社中心の文化になります。
つまり、人が変われば方針も変わりえます。近年は出社日数を増やす方向に動く会社も一部にありますので、入社時点の運用がそのまま続く前提で決めないほうが安全です。
フルリモートを必須にすると、選択肢は絞られます
フルリモートで働ける会社もありますが、ハイブリッドの会社に比べると数は限られます。
フルリモートを必須の条件にすると、仕事の内容や年収、試験のサポートといった他の条件で妥協が必要になることがあります。
どこまでを必須の条件にして、どこからを希望に留めるのかを、応募を始める前に整理しておくと選びやすくなります。転職の進め方は【アクチュアリーの転職ガイド】、相談相手の選び方はアクチュアリーに強い転職エージェントの選び方とは?正会員が解説で説明しています。
よくある誤解
「パソコン1台でできる仕事だから、どこでもフルリモートで働ける」
仕事の性質だけで決まるわけではありません。実際に影響するのは、会社の方針と配属部署の事情です。パソコンで完結する仕事でも、出社中心の文化の会社では出社になります。
反対に、Web会議が当たり前になっている会社であれば、打ち合わせの多いマネージャークラスでもリモートで働けることがあります。仕事ができるかどうかではなく、会社がどう考えているかを見てください。
「在宅勤務の日数が多い会社ほど働きやすい」
在宅にはデメリットもあります。
分からないことをすぐに聞けない雰囲気だと、自分で抱え込んでしまって仕事が前に進みません。情報共有も遅れがちです。
私も出社していた頃は、役員の方が話しているのが耳に入って、社内のプロジェクトがどこまで進んでいるかを知ることができました。在宅ではそういう情報が入ってきません。
在宅の日数の多さだけではなく、在宅でも困らない仕組みと雰囲気があるかどうかを見ていただきたいです。
「在宅勤務ができる会社なら、忙しくない」
在宅勤務の日数と労働時間の長さは、別の話です。決算の山場や商品開発の佳境は、在宅でも忙しくなります。在宅勤務で減るのは通勤時間で、仕事の量が減るわけではありません。働き方の柔軟さと労働時間は、それぞれ分けて確認することをおすすめします。
まとめ:アクチュアリーは在宅勤務は可能だが会社次第。自分に合った働き方を選ぼう。
入社前に要確認
就職・転職を検討している方は、在宅勤務の有無や出社率を企業ごとに確認することが重要です。特に地方移住や郊外への引っ越しを希望する場合やフルリモート勤務を望む場合は、求人票や面接時にしっかり確認しましょう。
また、リモートワークが可能であっても、入社直後はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)のため出社が必要になるケースもあります。長期的なキャリア形成を考え、自分に合った働き方を選ぶことが成功のポイントです。
家庭の事情(介護や子育て)などの特別な場合には、在宅勤務を認めてくれる場合もあるので、上司に相談することも必要です。
自分に合った労働環境を見つけるために
アクチュアリーの在宅勤務は、業務の特性上とても実現しやすい働き方です。しかし、出社率や在宅率は会社や部署ごとに異なるため、希望する働き方ができる環境かどうかを事前に確認することが大切です。
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本記事がアクチュアリー・アクチュアリー候補生の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!!!
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この記事の執筆者
松岡 / 日本アクチュアリー会 正会員(FIAJ)
株式会社ACEプロフェッショナル 代表取締役
アクチュアリーの転職支援・試験対策指導に従事



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