アクチュアリー試験の勉強を始めようと思ったとき、最初に引っかかるのが「いつから始めればいいのか」と「どれくらい時間がかかるのか」だと思います。この2つがはっきりしないまま教科書を開くと、自分が進んでいるのか遅れているのかが分からず、途中で手が止まりやすくなります。
この記事は、私自身の受験の経験と、試験対策の個別指導で見てきた事例をもとに、2026年9月に加筆しました。学習計画の立て方はYouTubeでも解説しています。読むより聞くほうが早いという方は、こちらもあわせてご覧ください。
「今からでも間に合う?」という不安に答えます
よくある質問:「もう8月だけど間に合いますか?」
「これからアクチュアリー試験の勉強を始めても間に合いますか?」
この質問は、毎年夏以降になると特に多く寄せられます。アクチュアリー試験は試験日が12月に設定されているため、8月時点で手をつけていない受験生の多くが「出遅れた」と不安になるのも無理もありません。
結論:今からでも十分可能。その理由とは?
結論から言うと、「今からでも間に合います」。重要なのは、残された時間ではなく、それをどう使うかです。アクチュアリー試験は確かに難関ですが、1日2〜3時間を継続して学習できれば、今からでも合格は現実的に狙えます。
「いつから」と「どれくらい」に、先に答えておきます。始める時期は、合格発表の翌月にあたる3月が最も計画を立てやすく、夏までに始められれば1科目は十分に狙えます。かかる時間は、1次試験なら1科目あたり200〜300時間、2次試験なら1科目あたり300〜500時間というのが私の感覚です。指導経験から見た幅ですので、下地のある科目ならもっと短く終わる方もいますし、逆に1年では届かない方もいます。
全科目そろえて正会員になるまでの年数も、気になるところだと思います。日本アクチュアリー会は、過去に資格を取得した方の平均的な受験年数を、入会時から準会員まで約5年、正会員まで約8年としています(出典:日本アクチュアリー会「受験に関するFAQ」。2026年3月に公表された「2025年度資格試験結果について」では、過去5年間の実績にもとづく正会員資格取得までの平均年数は9.0年と示されています)。私自身は5年で正会員になりましたが、その途中には、4科目を狙って1科目しか取れなかった年もあります。
科目ごとの合格率や、1次試験と2次試験で難しさの質がどう違うかは、「アクチュアリー試験の難易度|合格率と勉強時間を正会員が解説」で解説しています。
ですので、この記事では「今年の12月に何科目取るか」という短い目線と、「正会員まで何年かけるか」という長い目線の両方から、時間の見積もり方と計画の立て方をお伝えします。
アクチュアリー試験の勉強はいつから始めるべきか?
理想的な勉強開始時期とスケジュール感
理想を言えば、アクチュアリー試験の勉強は合格発表日の翌月、つまり3月ごろから始めるのがベストです。これにより、基礎を固め、過去問演習に十分な時間を確保できます。しかし、「理想」はあくまで理想。現実的には夏以降から始める方も多く、その中からも合格者は出ています。
3月を勧めるのには理由があります。試験本番までに目指す状態は、過去問15年分を2時間半で9割取れるようにしておくことです。3科目受けるなら、過去問だけで45年分を解くことになりますので、遅くとも9月には過去問に入っていたいところです。そこから逆算すると、3月には教科書と演習書がそろった状態でスタートし、9月までの半年で過去問に手が届く力をつけておく、という流れになります。
科目の順序にも前提関係があります。生保数理・損保数理・年金数理をまとめて狙う場合は、生保数理を先に固めてください。年金数理は生保数理の知識がないと理解しにくいので、順序を逆にすると同じところを二度やることになります。
なお、2027年度からは1次試験の科目構成と試験時間が変わります。これから数年かけて正会員を目指す方は、受ける科目を決める前にアクチュアリー試験の制度改正|新科目とみなし合格を正会員が解説もあわせて確認してください。
社会人・学生別の勉強開始タイミング
学生の場合、夏休みなど比較的長い時間をアクチュアリー試験に充てることができることもあるので、社会人受験生より比較的勉強時間の確保はしやすい印象があります。逆に、社会人は仕事との両立が課題となりますので、効率的な学習かつ毎日の継続が求められます。
今から勉強を始めるならどうすべきか?戦略的アプローチ
1日2〜3時間でも合格を目指せる理由
仮に8月から毎日2〜3時間勉強した場合、4ヶ月間で250〜350時間ほどを確保できます。1次試験の1科目に必要な量としては、十分に射程に入る時間です。ただし、時間の総量よりも、それ以上に「集中した学習」が鍵になります。
合格点を狙う「効率的な学習法」
まずは全てを完璧に理解しようとするのではなく、「合格点を取る」ことを目的にしましょう。過去問から出題傾向を把握し、頻出分野を優先的に学ぶことが大切です。数学や確率統計の基礎に時間をかけすぎるのではなく、得点源を確保する戦略が重要です。
過去問の活用と試験対策の優先順位
過去問は最強の教材です。最初から全問解こうとせず、まずは出題傾向を把握するところから始めましょう。3〜5年分を繰り返し解くことで、時間配分や解答スピードも向上します。解けなかった問題を「放置しない」復習体制も不可欠です。
他の勉強方法の記事でも書いていますが、最終的には「過去問15年分を2時間半で9割を取れる」ようにすれば、ほとんどの確率で合格できます。したがって、まずはここを目指して勉強することが大切です。
科目別に、どれくらいの時間がかかるか
「1科目200〜300時間」とひとまとめに言っても、実際は科目によって差があります。科目ごとに正確な時間を出すことはできませんが、指導をしていて時間がかかりやすい順に並べると、おおよその感覚はつかめると思います。
最も入りやすいのは数学です。確率・統計と微分積分にある程度の下地があれば、短い期間でも形になります。私自身、大学3年生の6月にアクチュアリーという職業を知り、9月ごろから勉強を始めて、その年の12月の試験で数学に合格しました。サークルとアルバイトと大学の授業を抱えた状態でしたので、下地のある方にとって数学が入り口として現実的だというのは、自分の経験からも言えることです。
会計・経済・投資理論(KKT)は、3つの分野が1科目に入っている分、範囲が広くなります。計算よりも覚えることの比重が高い科目ですので、暗記が苦にならない方は短く済みますが、そうでない方は数学より時間を見ておいたほうがよいです。私は暗記が得意ではなかったので、学生時代はKKTより損保数理を優先しました。
生保数理・損保数理・年金数理は、いずれも数学より重い科目です。分量が多く、過去問に入るまでに教科書と演習書を一通り回す必要がありますので、3月に始めて9月に過去問、という年間の流れがちょうど収まるくらいだと考えてください。年金数理は、前半こそ生保数理と重なりますが、後半は独特で、理解に時間がかかります。
2次試験は、1次試験とは性質が変わります。計算ではなく暗記の比重が高く、1次と同じつもりで取り組むと時間だけが過ぎていきます。私は社会人2年目に生保1と生保2の2科目を狙いましたが、勉強の要領をつかめたのが11月で、その年は生保1だけの合格に終わりました。2次試験は、1次試験の1科目より長い時間を見込んでおくほうが、計画が崩れにくいと思います。
科目ごとの具体的な進め方は、数学の勉強方法【アクチュアリー試験】やKKT(会計・経済・投資理論)の勉強方法【アクチュアリー試験】など、科目別の記事に書いています。
勉強時間の目安と日々の学習の進め方
試験日までに確保すべき勉強時間とは
私の指導経験では、1次試験の1科目に200〜300時間ほどを費やす方が多いです。8月から12月の4ヶ月で換算すると、1日2時間前後が現実的な目標となります。これを下回ると、合格が難しくなる可能性が高まります。なお、2次試験は1科目300〜500時間と、1次試験よりも重くなります。2次試験を見据える方は、1次試験のうちから勉強の習慣を作っておいてください。
毎日の学習習慣の作り方
毎日決まった時間に学習することで、習慣化が進みます。朝の1時間、夜の1時間など、自分の生活リズムに合わせて「学習の固定時間」を作るのがおすすめです。また、スマホやSNSの通知を切って「集中環境」を作ることも重要です。
年間スケジュールの作り方
勉強時間の総量の見当がついたら、次はそれを年間のスケジュールに落とします。計画を立てることには、やるべきことが明確になるという効果に加えて、全体のどこにいるかが分かるのでモチベーションが保ちやすい、という効果があります。プレゼンでも、最初に「今日はこの3つを話します」と言われたほうが集中して聞けると思いますが、それと同じです。
手順は4つです。まず目標を決めます。今年の12月に何を受けるかを、はっきり決めてください。ここで「2科目受けて、うまくいったら3科目目も」と考える方が多いのですが、私の指導経験では、この立て方はうまくいかないことが多いです。目標は一番きついところに置いて、進めてみて苦しければ落とす、という順序のほうが、結果的に多く取れます。
次に、科目ごとに試験前どういう状態になっていたいかを決めます。1次試験であれば、過去問15年分を2時間半で9割取れる状態です。3つ目に、そこから逆算して年間のスケジュールに落とします。月単位で何をやるか、という大まかな粒度で構いません。3月に始めて12月の試験を受ける場合は、次のような流れになります。

教科書と演習書は、順番にやるのではなく並行して進めます。教科書を読み終えてから問題を解こうとすると、読むだけで夏が終わってしまうためです。読んだ章の問題をその都度解く、という進め方のほうが、結果として早く仕上がります。
最後に、年間のスケジュールを週単位、そして1日単位へ分解します。3月から始めるなら、3月の第1週・第2週・第3週・第4週に何をやるかまで決めます。ただし、12月までの全期間を1日単位で組むのは現実的ではありません。1日単位に落とすのは1〜2週間先までで十分です。週のスケジュールをこなしてみて、これはきついと感じたら、年間のほうを組み直します。
予備の週を入れておく
計画を立てるときに一番お伝えしたいのが、余裕を持たせておくことです。週単位のスケジュールを引くときに、何も割り当てない「予備の週」を作っておいてください。遅れたらその週で挽回し、計画どおりに進んだらその週は遊んでよい、という使い方をします。仕事のプロジェクトでも、計画どおりに終わることはまずありません。試験勉強も同じです。
もう一つ、勉強以外の予定も最初から計画に入れてください。計画を立てる瞬間はやる気が高いので、毎日勉強する前提で組んでしまいがちです。ですが、週に1回飲み会に行く方がその前提で組めば、その計画は初週で崩れます。行く日を先に決めて、そのうえで残りを勉強に割り当てるほうが、計画は長持ちします。
働きながら勉強時間をどう作るか
受験生の多くは社会人です。仕事をしながら200時間、300時間を積み上げるにはどうするかが、計画の中で一番の難所だと思います。参考までに、私が受験生だったころの1日の組み立てをそのまま書きます。
私は朝に寄せていました。6時半に起きて7時の電車に乗り、7時半には会社の下のカフェに着きます。電車の中の30分と、カフェでの7時半から10時までが、その日の勉強時間です。当時の勤務先はフレックスタイム制で10時出社にできたので、始業を遅らせることで朝の勉強時間を1時間増やしていました。夜は仕事のあとで疲れていて集中しにくいので、勉強の主戦場を朝に移した、という感覚です。
休日は、家にいないようにしていました。6時半に起きて7時には近所のファミリーレストラン、混んでくる前に出て外で昼食、公園で昼寝をしてからまたカフェで2〜3時間、集中力が落ちたら公園で暗記、夕食も外で済ませてまたカフェ、という一日です。食事と昼寝以外はほぼ勉強しているので、11〜12時間は積み上がります。家には布団もゲームもあって、私はそれに勝てる自信がありませんでした。外食代とカフェ代はかかりますが、1年早く正会員になれれば取り返せると考えて、そこにはお金を使っていました。
試験の直前期には、平日5時間、休日13時間ほど勉強していた時期もあります。ただし、これは試験前の追い込みの話で、1年を通してこの量を続けていたわけではありません。この数字を年間の目標にすると、まず続きません。
意外に思われるかもしれませんが、私は学生のときより社会人になってからのほうが勉強しやすいと感じていました。社会人のほうが生活が規則正しく、出社前と退社後という固定の枠に勉強を組み込めるからです。職場に同じ試験を受けている同僚や先輩がいることも、モチベーションの面で大きいと思います。
勉強時間を削ってはいけないもの
時間を作ろうとすると、睡眠を削る発想になりがちです。私は逆で、7時間以上の睡眠は死守していました。就寝と起床の時間を固定し、14時以降はカフェインを取らず、ベッドでは勉強しない。寝る前にスマートフォンを見ない。これだけでも翌日の集中力はかなり変わります。昼食のあとに10〜20分の昼寝を入れると、午後の立ち上がりも早くなります。
運動も同じです。試験前は毎日15〜20分走っていました。走ると体が疲れてよく眠れますし、翌日の集中力が違います。長い時間勉強するには体力が要りますので、運動は勉強時間を削るものではなく、勉強時間を支えるものだと考えています。1次試験は3時間座り続ける試験でもありますから、その意味でも体力は効いてきます。
あとはスマートフォンです。勉強中は電源を切って、かばんの奥にしまっていました。ポケットに入っているだけで気が散ります。ゲームは一度始めると止まらないたちでしたので、試験前は友人に預けていました。自分が何に弱いかを把握して、手の届かないところに置いておく、という発想が有効だと思います。
続かなくなったときの立て直し方
計画は、そのとおりには進みません。大事なのは、遅れたときにどう戻すかです。
まず、定期的に見直す時間を取ってください。遅れているなら、遅れた状態を前提にスケジュールを組み直します。そのうえで、なぜ遅れたのかを分けて考えます。仕事や学業で時間が取れなかったのか、時間はあったのにやらなかったのか。原因によって打ち手が変わるからです。前者なら計画の量を落とす、後者なら勉強する場所や時間帯を変える、という具合です。
そもそも計画を立てたこと自体を忘れてしまう、という方も多くいます。私がお勧めしているのは、作った計画を印刷して家の壁に貼ることです。あわせて、朝7時にカフェに行く、7時の電車に乗る、といった形で、意思に頼らず時間と場所で勉強を始めてしまう仕組みを作っておくと、立て直しが早くなります。
同じ場所で続けていると飽きてきますので、場所を変えるのも有効です。私は自宅・カフェ・公園・電車を使い分けていました。平日の夜は移動時間がもったいないので自宅、朝はカフェ、暗記は声に出せる公園、という具合です。それでも戻らないときは、受ける科目数を減らす判断をしてかまいません。3科目で組んでみてきついと感じたなら、2科目に落として確実に取りにいくほうが、結果として早く正会員に近づきます。
モチベーションそのものが落ちているときは、合格した先の自分を思い出すのが効きます。私は毎晩寝る前に、正会員になったら何ができるようになるかを想像していました。維持の方法をもう少し詳しく知りたい方は、アクチュアリー試験へのモチベーションを維持する6つの方法|模擬試験も活用しようもご覧ください。
やるか、やらないか。それが合格への分かれ道
行動を起こすことの重要性
「まだ間に合いますか?」という問いは、実は本質的な問いではありません。もっとも大切なのは、「やると決めて動く」こと。迷っている時間があるなら、まずは問題集を1ページでも開いてください。小さな一歩が合格に近づく鍵です。
今日1ページからでも始めよう
「完璧に始める」必要はありません。最初の1ページ、最初の10分でもいいのです。始めた人だけが、その先にある成果を手に入れることができます。今日の小さな行動が、12月の合格につながります。
継続が力になる:習慣化のコツ
勉強の継続には「習慣化」が不可欠です。学習記録をつける、SNSで進捗を報告する、仲間と励まし合うなど、自分に合ったモチベーション維持方法を取り入れてください。やめないこと、それが合格への最短ルートです。
よくある誤解
誤解1:学生のほうが時間があるから有利
学生の方とお話しすると、「社会人は忙しいから、学生のうちに取っておいたほうがいい」と言われることがあります。まとまった時間を取りやすいのは確かですが、私の実感は逆でした。学生時代はアルバイトで帰宅が遅くなる日もあって生活が不規則で、大学4年のときは4科目を狙って1科目しか取れませんでした。社会人になってからのほうが生活が規則正しく、出社前と退社後に勉強を組み込めたので、その年は3科目に合格しています。時間の長さよりも、毎日同じ時間に勉強できる生活のほうが効いてきます。
誤解2:まず2科目、うまくいけば3科目目に挑戦する
安全に見える立て方ですが、私の指導経験では、この形で3科目目まで届く方はほとんどいません。計画は目標に合わせて組むものですので、最初に2科目で組めば、2科目分のスケジュールしか動きません。3科目を狙うなら3科目で組み、進めてみてきついと分かった時点で落とす。この順序のほうが、最終的に取れる科目数は多くなります。
誤解3:勉強時間を増やすために睡眠や運動を削る
「1日10時間も勉強できない」と言われることがありますが、私が休日にその量をこなせたのは、7時間以上寝て、毎日走っていたからです。睡眠を削れば翌日の集中力が落ち、机に向かっている時間のわりに進まなくなります。アクチュアリー試験は1年がかりの勉強になりますので、定期テストのような短期決戦とは考え方を分けたほうがよいです。徹夜は、この試験には向いていません。
まとめ:今からでも遅くない。勉強を始めよう
本記事の要点まとめ
- アクチュアリー試験の勉強は今からでも十分間に合う
- 1日2〜3時間の継続学習で合格可能な水準に到達できる
- 完璧より「合格点」を狙う戦略が重要
- 「過去問15年分を2時間半で9割とれるようにする」
- まずは1ページから、行動を起こすことが合格の鍵
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この記事の執筆者
松岡 / 日本アクチュアリー会 正会員(FIAJ)
株式会社ACEプロフェッショナル 代表取締役
アクチュアリーの転職支援・試験対策指導に従事


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