アクチュアリー試験の制度改正|新科目とみなし合格を正会員が解説

受験生
受験生

2027年度から試験制度が変わると聞いて、今持っている科目がどうなるのか不安です。

松岡
松岡

落ち着いてください。まずはご自身の合格状況に当てはめて確認していきましょう。

2027年度から試験制度が変わると聞いたものの、合格済みの科目がどう扱われるのか、今年12月の試験で何を受ければよいのかが分からず、手が止まっている方は多いと思います。公式資料で確認できる事実と、受験指導をしている私の考えとを分けて書きましたので、ご自身に近いところから読んでみてください。

  1. 結論:2026年度の試験が、今の科目で合格を積める最後の機会です
  2. 2027年度から何が変わるのか
    1. 1次試験は5科目・各150分になる
    2. 準会員になるには「第1次研修」も必要になる
    3. 2次試験と正会員要件は大きくは変わらない
    4. 研修の変更(特定分野2研修は2027年夏で終わる)
    5. なぜ見直されるのか
  3. 新しい1次試験5科目の中身
    1. 数学:確率・統計だけになる
    2. 専門数理1:生保数理と年金数理を合わせた科目
    3. 専門数理2:損保数理とモデリングを合わせた科目
    4. 会計・経済・金融システム/リスクマネジメント・投資理論
  4. 今の合格状況だと、2027年度以降はどうなるか
    1. 研究会員の方(1次試験を受験中の方)
    2. すでに準会員の方
    3. 正会員の方
  5. 2026年度の試験で、何を受けておくべきか
    1. 生保数理か年金数理の片方だけ合格している方
    2. 生保数理と年金数理を今年まとめて受けようとしている方
    3. KKTにまだ合格していない方
    4. KKTに合格済みの方・準会員の方は、研修の日程を押さえる
  6. 2027年度から1次試験は難しくなるのか
    1. 過去問がない科目が生まれる
    2. これまでの過去問はどこまで使えるか
  7. よくある誤解
    1. 誤解1 生保数理だけ合格していれば、専門数理1の一部が免除される
    2. 誤解2 KKTに合格していれば、新しい2科目は自動的に合格扱いになる
    3. 誤解3 制度が変わると、今の準会員・研究会員の資格が変わる
  8. まとめ
  9. 試験対策のサポートについて
  10. 次に読むおすすめ記事

結論:2026年度の試験が、今の科目で合格を積める最後の機会です

2026年12月の試験は現行の科目のまま行われ、2027年度から1次試験は新しい5科目に組み替わります(日本アクチュアリー会「資格試験・研修制度の見直しについて」PDF)。特に

押さえておきたい点は3つです。

1つ目は、生保数理と年金数理は、両方に合格して初めて新科目「専門数理1」に合格したものとみなされることです。片方だけの合格は持ち越されません。

2つ目は、会計・経済・投資理論(以下、KKT)の合格は、2027年9月までに「特定分野2研修」を修了して初めて、新しい2科目の合格とみなされることです。

3つ目は、これまでに承認された正会員・準会員・研究会員の資格は変わらないことです。

2026年度試験の申込締切は2026年10月14日(水)18時、1次試験は12月7日から10日です(日本アクチュアリー会「資格試験情報」)。

ご自身に何が必要になるかは、公式の早見表があるので、そちらを活用してください(研究会員用準会員用、Excelファイルが開かれます)。合格科目を入力すると確認できます。

2027年度から何が変わるのか

1次試験は5科目・各150分になる

科目数は5科目のままですが、中身が組み替わります。

新しい科目内容見直し前のどの科目から来るか
数学確率・統計「数学」のうち確率・統計部分(モデリング部分は専門数理2へ移管)
専門数理1生命表を用いる専門数理「生保数理」と「年金数理」
専門数理2生命表を用いない専門数理「損保数理」と、「数学」のうちモデリング部分
会計・経済・金融システム会計・経済・金融システムの基本KKTのうち会計・経済部分と、特定分野研修(初期教育)「金融システム」
リスクマネジメント・投資理論リスクマネジメント・投資理論の基本KKTのうち投資理論部分と、特定分野研修(初期教育)「アクチュアリアル・リスクマネジメント」

試験時間は各150分になります。2026年度までは各180分ですので(資格試験情報)、30分短くなります。

出題形式や配点、合格基準は、現時点の公式資料(2026年9月現在)には書かれていません。

準会員になるには「第1次研修」も必要になる

2027年度からは、1次試験5科目に加えて「第1次研修」の修了が準会員の要件になります。第1次研修は、オンデマンド配信の「第1次プロフェッショナリズム研修(初期教育)」(2027年9月頃に配信開始予定)と、eラーニング「アクチュアリー行動規範とアクチュアリー行動基準」からなり、1次試験5科目の合格者が受講できます。

研究会員のうちから実務に携わる方は多いので、職業倫理の研修を早く受けられるのは前向きな変化だと私は受け止めています。

2次試験と正会員要件は大きくは変わらない

2次試験の科目は現行と同様で、2026年度以前に準会員になった方もそのまま受験できます。正会員になるための研修は、対面の「第2次プロフェッショナリズム研修(初期教育)」と「データとシステム」研修になります。

研修の変更(特定分野2研修は2027年夏で終わる)

「金融システム」研修と「アクチュアリアル・リスクマネジメント」研修(公式資料ではまとめて「特定分野2研修」)は、内容が1次試験に組み込まれるため、2027年夏を最後に廃止されます。「データとシステム」研修は続きます。

実施時期特定分野2研修データとシステム研修
2026年度夏(2026年8・9月頃)最大2日程最大2日程
2026年度冬(2027年2・3月頃)最大2日程最大2日程
2027年度夏(2027年8・9月頃)最大2日程最大2日程
2027年度冬(2028年2・3月頃)以降廃止1日程

なぜ見直されるのか

今の試験体系は始まって約25年が経ちます。今回の見直しは、2024年3月に制定された教育シラバス(2025年4月発効)が求める知識・技能を確実に身につけてもらうためのもので、シラバスの範囲そのものは変えないと説明されています。

新しい1次試験5科目の中身

数学:確率・統計だけになる

新しい数学は確率・統計の科目になり、モデリングは専門数理2に移ります(同PDF p.3)。範囲が狭まるので、統計を学んでいる学生には最初の1科目にしやすくなり、入口のハードルは少し下がったと私は考えています。勉強の進め方は数学の勉強方法にまとめています。

専門数理1:生保数理と年金数理を合わせた科目

専門数理1は「生命表を用いる専門数理」で、生保数理と年金数理の内容を合わせた科目です(同PDF p.3)。指導していて感じるのは、年金数理の序盤は生保数理と重なる内容が多いということです。

両者がどのくらいの比重で出題されるかは、公式には示されていません。日本では生命保険分野で働くアクチュアリーが多いことなどから、私は生保数理の比重が大きくなるのではないかと予想していますが、あくまで予想です。現行科目の勉強法は生保数理の勉強方法年金数理の勉強方法で解説しています。

専門数理2:損保数理とモデリングを合わせた科目

専門数理2は「生命表を用いない専門数理」で、損保数理と、数学のうちモデリング部分を合わせた科目です。現行の数学ではモデリングの問題がたびたび出題されてきたので、専門数理2でもモデリングの対策は欠かせないと私は考えています。損保数理については損保数理の勉強方法をご覧ください。

会計・経済・金融システム/リスクマネジメント・投資理論

この2科目は、KKTに、これまで研修で扱っていた内容が加わった科目です。

正直に言うと、どのような問題が出るかは、現時点では私にも読めません。

手がかりになるのは日本アクチュアリー会の教育シラバスです。何を学ぶべきかと、学習の参考になる書籍が載っています。
日本アクチュアリー会「教育シラバスを制定しました」

リスクマネジメントは2次試験の生保2や損保2で扱うリスク管理と重なる部分が大きく、1次試験では計算が中心になるのではないかと私はみていますが、これも予想です。

KKTの現行の勉強法はKKT(会計・経済・投資理論)の勉強方法にまとめています。

今の合格状況だと、2027年度以降はどうなるか

公式の早見表に合格科目を入れると、みなし合格科目と今後必要な科目・研修が表示されます。ここではよくある状況を整理しました。1次試験全体の進め方は1次試験の合格方法も参考にしてください。

研究会員の方(1次試験を受験中の方)

2026年度の試験を終えた時点の状況2027年度以降の扱い(みなし合格)2027年度以降に必要な科目・研修2026年度のうちに打てる手
1次試験の科目にまだ合格していないなし新しい5科目と第1次研修2026年度の試験で、今の科目の合格を積んでおく選択肢もあります
数学のみ合格数学専門数理1・専門数理2・新しい2科目と第1次研修
生保数理のみ合格(または年金数理のみ合格)なし(専門数理1にはならない)専門数理1(生保数理と年金数理の範囲)ほかと第1次研修2026年度に残りの1科目に合格すれば専門数理1になる
生保数理と年金数理の両方に合格専門数理1残りの科目と第1次研修
損保数理に合格専門数理2残りの科目と第1次研修
KKTに合格し、2027年9月までに特定分野2研修を修了会計・経済・金融システム/リスクマネジメント・投資理論残りの科目と第1次研修研修の日程を早めに確保する(2026年度の合格者は2027年8・9月の回)
KKTに合格したが、特定分野2研修を修了しないなし新しい2科目(2027年度は受験できず、2028年度以降)ほかと第1次研修2027年9月までに研修を修了すれば避けられる
2026年度までに1次試験の全科目に合格し、2026年度末までに準会員として承認準会員のまま次の「すでに準会員の方」へ

すでに準会員の方

準会員の資格は変わりません。気をつけたいのは研修です。特定分野2研修を2027年9月までに修了していない場合、正会員になるには新しい2科目への合格が必要になり、その2科目は2027年度には受験できず、2028年度以降の受験になります。

なお、2025年度までに特定分野研修(初期教育)を受講済みの方は、特定分野2研修と「データとシステム」研修を受講済みとみなされます。プロフェッショナリズム研修の扱いも含め、早見表(準会員用)で一度確認しておくと安心です。

正会員の方

正会員の資格は変わりません。後輩から受験の相談を受けたときは、上の表と早見表をご活用ください。

2026年度の試験で、何を受けておくべきか

申込締切は2026年10月14日(水)18時です。

ここからはアクチュアリー試験の受験指導をしている私の考えです。受ける科目を決めるのはご自身ですので、判断材料の一つとしてお読みください。

生保数理か年金数理の片方だけ合格している方

2026年度に残りの1科目に合格できるかどうかで、専門数理1の範囲をもう一度勉強し直すかが決まります。今年はこの1科目を最優先にすることをお勧めします。

実際には、ほかの科目は合格していて年金数理だけが残っている方によくお会いします。進め方は年金数理の勉強方法をご覧ください。

生保数理と年金数理を今年まとめて受けようとしている方

片方だけ合格しても2027年度には持ち越せません。勉強時間と合格の見込みを考えると、今年は損保数理とKKTに切り替えるのも一つの選択肢です。どちらも合格すれば、新制度でそのまま活かせるからです。

一方で、転職や就活の支援をしている立場からは、別の見方もお伝えしたいと思います。生命保険会社で商品開発や決算に携わるなら、責任準備金や保険料の計算の考え方は実務で欠かせません。

年金数理が不合格でも、生保数理の勉強は仕事で役に立ち、無駄にはなりません。試験戦略を優先するか、実務で使う知識を先に固めるかは、今後の働き方と合わせて考えてみてください。

KKTにまだ合格していない方

2026年度にKKTに合格し、2027年8・9月の特定分野2研修を修了すれば、新制度の2科目に合格したものとみなされます。

1科目分の試験勉強で2科目分の扱いになるという意味で、今年のKKTは価値が大きいと私は考えています。勉強法はKKT(会計・経済・投資理論)の勉強方法をご覧ください。

KKTに合格済みの方・準会員の方は、研修の日程を押さえる

特定分野2研修は、2026年度冬(2027年2・3月頃)と2027年度夏(2027年8・9月頃)に、それぞれ最大2日程しか残っていません。2026年度の試験でKKTに合格した方は、2027年8・9月の回を受けることになります。

最後の回で体調や業務の都合がつかないと、2028年度以降に新しい2科目を受験することになります。早い回を申し込んでおくことをお勧めします。

2027年度から1次試験は難しくなるのか

過去問がない科目が生まれる

約25年同じ体系が続いたことで、1次試験は過去問が豊富で、それが受験生の支えでした。新しい2科目には過去問がなく、出題が読めないという意味で、対策は難しくなったと私は考えています。試験時間の短縮が問題量の減少につながるのか、計算の速さを問う方向に向かうのかは、始まってみないと分かりません。

一方で、研修で学んでいた内容が試験になり、1次試験の段階から実務に近い知識が問われるようになる点は、アクチュアリー教育として前向きに受け止めています。

これまでの過去問はどこまで使えるか

公式の過去問は、日本アクチュアリー会の資格試験過去問題集で公開されています。数学・専門数理1・専門数理2は見直し前の科目を組み合わせた科目ですので、これまでの過去問は対策の素材になると私は考えていますが、出題範囲の詳細が公表されたら改めてお伝えします

取り組み方は過去問の使い方で解説しています。

よくある誤解

誤解1 生保数理だけ合格していれば、専門数理1の一部が免除される

専門数理1に部分的な免除の仕組みはありません。2026年度までに生保数理と年金数理の両方に合格していなければ、2027年度以降に専門数理1を受験する必要があります。

誤解2 KKTに合格していれば、新しい2科目は自動的に合格扱いになる

2027年9月までに特定分野2研修を修了することが条件です。修了しなかった場合、2027年度は新しい2科目を受験できず、2028年度以降の受験になります。

誤解3 制度が変わると、今の準会員・研究会員の資格が変わる

すでに承認されている資格は変わりません。変わるのは、これから準会員や正会員になるための要件です。

まとめ

2027年度から、1次試験は新しい5科目・各150分になり、準会員になるには第1次研修の修了も必要になります。生保数理と年金数理は両方そろって専門数理1に、KKTは特定分野2研修の修了とセットで新しい2科目になります。2026年度の試験と2027年9月までの研修が、今の合格を活かすための区切りです。ご自身の状況は、公式の早見表で一度確認してみてください。

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この記事の執筆者
松岡 / 日本アクチュアリー会 正会員(FIAJ)
株式会社ACEプロフェッショナル 代表取締役
アクチュアリーの転職支援・試験対策指導に従事

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