アクチュアリーとプログラミング~正会員が解説~

アクチュアリー研修
受験生
受験生

「アクチュアリーはプログラミングスキルが必要」

って聞いたけど本当ですか

Donald
Donald

はい、本当です。

私も日々勉強中です

そこで今回は「アクチュアリーとプログラミング」

について話ができればと思います

はじめに

保険業界で重要な役割を果たすアクチュアリーは、プライシング(保険料設定)、決算、リスク管理やデータ分析など、数多くの業務に携わります。

近年では、デジタル技術の進化により、アクチュアリーにも、プログラミングスキルがますます求められるようになってきています。

今回は、実際にアクチュアリー正会員として働く私が、アクチュアリーに求められるプログラミングスキルについて話していきます。

データサイエンティストとアクチュアリーで悩んでいる方やアクチュアリーになるか迷っている方の参考になれば幸いです。

もちろん、この記事は私の独断と偏見で書いているので、反対意見があれば、是非コメント欄で教えていただければと思います。

1.プログラミングが必要な場面

現状、アクチュアリーはExcelを中心に業務を行うことが多いです。
ただ、業務内容によっては、Excelだけでは仕事ができない場合があり、色んな場面でプログラミング能力が求められます。
今回は、実際に私が経験した3つの場合について、ご紹介します。

①ビッグデータ分析

保険会社の保有している契約の件数は1,000万件を超えることがあり、過去のデータを合わせて分析しようとすると、10億レコード以上ある場合も珍しくありません。
この膨大な量をExcelでは処理できないので、これらを処理するためのソフト・統計ツールを操るためにプログラミングスキルが求められます。

アクチュアリーはこうしたビッグデータを活用して、
・発生率の作成
・収益性の分析
・決算業務
などを行うために、データの前処理やデータベースの操作などを行います。
これを時間が限られている中で正確にやる必要があるため、ある程度のプログラミング能力が求められることがあります。

②予測モデルの開発

保険会社では先述のビッグデータを使って、機械学習を用いた予測モデルの開発をすることがあります。
この場合でも、数理的知識・プログラミング能力を買われて、社内のアクチュアリーがアサインされることが多いです。
アクチュアリーが関わる予測モデルの開発の例は以下の通りです。

  • 引受リスク評価:告知内容などに基づいて将来の死亡リスクなどを予測する
  • 解約予測:顧客の属性やログイン履歴などを用いて、解約しそうな顧客を特定する
  • 保険金の不正請求検知:悪質な保険金請求がないかをAIを使って判定する
  • 資産運用:過去のデータに基づいて、資産の買付・売却タイミングや銘柄の選定を行う

こうした予測モデルの開発では、データサイエンティストと同等以上の仕事を求められる場合があります。

しかし、私が実際に参画した引受リスク評価のプロジェクトや他のプロジェクトの話などを聞くと、社外のデータサイエンティストと協働してモデル開発を行うことが多いです。今後はアクチュアリーとしての知識とデータサイエンスの知識の両方を併せもった人材が必要になってくるでしょう。私もそうなれるように頑張ります。

③業務効率化

アクチュアリーが携わる決算や商品開発の業務については、過去と類似の業務をすることが多くあります。
そのため、ルーティン作業については、プログラミングをつかって自動化する(できる)場合があります。
業務を自動化することで、人為的ミスを減らしつつ、将来の業務効率を改善することができます。
しかし、大きなデメリットとしては、その自動化ツールを作ることに、膨大な時間と検証が必要になります。業務が逼迫している会社では、自動化ツールを作る時間の方がもったいないといったことが起きます。
それでも、会社のプロジェクトとして、BPR(業務改革)が行われる場合に、アクチュアリーがRPAといった業務効率化推進の業務に携わる場合もあります。

もちろんプロジェクトに関わらず、アクチュアリーとして働く上では、普段の業務をなるべく自動化・効率化する意識が大切です。(自戒も込めて)

2. プログラミング言語

次にアクチュアリーがよく使うプログラミング言語やツールについて、ご紹介します。

①VBA(Visual Basic for Applications)

アクチュアリーの業務では、Excelなどにあるデータを使って、複雑かつ大量な処理を行うためにVBAを使用することがよくあります。

10年以上前に開発した過去商品の収益性計算ファイルなどを見ると、VBAで全て計算している場合が実際にあり、解読するために、ある程度時間をかけて勉強した覚えがあります。

また、VBAは、業務の自動化にも役立つので、なんだかんだ今でも私はVBAを使って業務することが多いです。マクロの記録といったノーコードで始めることもできるので、初心者が取っ付きやすいものの1つかもしれません。

私はこちらの書籍からマクロの勉強を始めました。かなりわかりやすいので、マクロやVBAの基礎を学びたい方にはお勧めです。

②Python

Pythonは、データ分析、データ可視化、機会学習モデルの生成など、幅広く使用されています。
Pythonには豊富なライブラリやフレームワークが提供されており、さまざまな用途に適したツールが豊富に揃っています。データ分析にはPandas、機械学習にはScikit-Learnなどがあります。

データサイエンティストの多くの方がPythonを使っている印象ですし、色んな言語の中で、ユーザーも多く、書籍も豊富なので、独学で学びやすいのかなと思います。

初めて独学で勉強する方は↓がおすすめです。割と薄めの本なので、時間をかければ1週間で演習ができると思います。これでPythonの概要を掴むことができると思います。

また、pythonでもVBAと同じで、業務効率化ツールを作成することが可能です。↓の本はボリュームが多いですが、手元に置いておくと辞書のように使えて便利です。

また、本格的にデータサイエンスとPythonを学ぶなら腰を据えて↓の本を取り組むことをお勧めします。私もこれを1通りやって、なんとかわかるようになってきました。

③R

Rは統計学やデータ分析に特化しており、特に研究者、データサイエンティストなどに広く利用されています。
モデリング、仮説検定、回帰分析、クラスタリング、時系列分析などの統計に関する豊富なライブラリが利用できます。

また、Rはggplot2というライブラリを使うことで、美しいグラフを生成することができるので、データの可視化に強みがあります。

ただ、私の周りでアクチュアリーの業務で使っている人に出会ったことはありません。しかし、アクチュアリーサイエンスなどの研究をしている人がよく使っている印象があり、将来的にアカデミアに戻って、研究したい方には向いている(?)のかもしれません。

私はあまりRを使ったことないですが、アクチュアリーの岩沢さんが書いた↓の本は一読しました。機械学習とリスク管理といういかにもアクチュアリーらしい本です。

④SAS(Statistical Analysis System)

SASとはSAS Institute社が提供するデータ解析や統計モデリングのためのソフトウェアです。
SASはビッグデータの処理に長けており、アクチュアリーや製薬会社のデータサイエンティストが主に使っているイメージです。

SASには独自のプログラミング言語がありますが、SQLを用いることも可能です。

また、ノーコードでデータ集計、分析、モデルの生成ができるように、色んなツールが備わっているので、プログラミングが書けなくても、使うことができるのが魅力です。そのため、多くの金融機関などで、採用されております。

しかし、大きなデメリットとして、価額が高い(おそらく)ので、個人で購入することは困難かと思います。ただ、学生用の割引などがあるみたいなので、学生の方は個人で触ってみてもよいかもしれません。
私が新卒で入った会社ではSASを使っていましたが、今の会社では導入されておらずSASの能力を発揮する機会がありません(笑)個人的にSASが一番好き・得意なので、機会があればまた活用したいなぁと思っております。

私が独学で勉強した本はこちらです。最初の数ページをやるだけで、基礎はばっちりです。

⑤Access

Microsoft Accessはデータベース管理に役立つツールで、ビッグデータ分析で主に使用されます。

クエリのようにノーコードで活用することができますが、SQLを書いて処理をするのがアクチュアリーの中では一般的かと思います。

ただ、上述の4つと比較しても(個人的に)使いにくいので、あまり好きではありません。これからAccessを導入し始める会社は少ないかと思いますが、過去のファイルを確認する場面があるかもしれませんので、基本操作は知っておいた方がよいかもしれません。

おわりに

保険業界のデジタル化とデータ活用の進展に伴い、「ビッグデータ分析」「予測モデル開発」「業務効率化」など、アクチュアリーにはプログラミングスキルが、より求められるようになってきています。

保険数理的な知識とプログラミングスキルを結びつけることで、よりレベルの高いデータ分析をはじめ、リスク評価や保険商品の開発に貢献することができ、アクチュアリーとしての市場価値はさらに高まることでしょう。

また、会社や部署、目的などに応じて、学ぶべきスキルはこれからも変遷し続けます。これからも継続的な勉強がアクチュアリーには求められてきます。皆さんも、プログラミングスキルを磨きながら、アクチュアリーの世界で新たな可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

私も引き続き頑張って勉強していきます。一緒にがんばりましょう!

今回の記事が、アクチュアリーを目指している方の参考になれば幸いです。

AC育成塾では、みなさまのアクチュアリーとしての成功の支えとなれるように、色んなコンテンツをやっていきたいと思っていますので、これからも一緒に頑張っていきましょう!

最後までご覧いただきありがとうございました!

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