
2024年度の生保2中問の試験問題を解説します。

問題については、日本アクチュアリー会のサイトから引用させていただいております。
https://www.actuaries.jp/examin/2024exam/20241213/2024-H-1213.pdf
※本解答速報は、試験問題に対する参考解答を提供するものであり、公式解答ではありません。正確な解答は、日本アクチュアリー会が発表する公式情報をご確認ください。
本情報の作成には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。本速報を利用することで生じるいかなる結果についても、当方は責任を負いかねます。
間違えている箇所がございましたら、コメントでご教示いただけますと幸いです。
2-1.ストレステスト
問題
(1)生命保険会社が統合的リスク管理の一環として行うストレステストの意義・目的およびストレスシナリオを設定する際の留意点について、「保険会社向けの総合的な監督指針」の内容を踏まえ、簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数は1000字)(10点)
解答
(1)
◯生命保険会社がストレステストを行う意義
- 保険会社は、将来の不利益が財務の健全性に与える影響をチェックし、必要に応じて、追加的に経営上又は財務上の対応をとって行く必要がある。そのためのツールとして、感応度テスト等を含むストレステスト(想定される将来の不利益が生じた場合の影響に関する分析)は重要である。
- 特に、市場が大きく変動しているような状況下では、VaRによるリスク管理には限界があることから、ストレステストの活用は極めて重要である。
- 保険会社においては、市場の動向等も勘案しつつ、財務内容及び保有するリスクの状況に応じたストレステストを自主的に実施することが求められる。
◯ストレスシナリオの設定において留意すべき点
- ヒストリカルシナリオ(過去の主な危機のケースや最大損失事例の当てはめ)のみならず、仮想のストレスシナリオによる分析も行っているか。
- 仮想のストレスシナリオについては、内外の経済動向に関し、株式の価格、金利、為替、信用スプレッドなど、保険会社の保有するリスクに応じて、複数の要素についてストレスシナリオを作成しているか。
- 複数の要素が同時に変動するシナリオについて、前提となっている保有資産間の価格の相関関係が崩れるような事態も含めて検討を行っているか。
- 保有する資産の市場流動性が低下する状況を勘案しているか。
- 変額年金保険の様なオプション・保証性の高い要素については、その特性を考慮した上で、適切なストレスシナリオを設定しているか。
- 再保険やデリバティブ等によるリスクのヘッジを行っている場合には、カウンターパーティリスクを考慮してストレスシナリオを設定しているか。
- ストレステストの設定に際しては、取締役会において、保険会社におけるリスク管理の方針として、基本的な考え方を明確に定めているか。
- その際、基本的な考え方は、統合リスク管理との間に矛盾がなく、かつ、統合リスク管理の計量化手法で把握できないリスクを捉えるとの観点からの配慮がなされているか
- また、取締役会等において、定期的に、かつ必要に応じ随時、保険会社の業務の内容等を踏まえ、設定内容を見直しているか。 等
過去問H22の解答から抜粋
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H22/H22H.pdf
解説
監督指針および過去問からの出題です
2020年問題3(2)、H24問題3(2)、H22問題2(4)で出た問題なので、書けた受験生が多かったのではないでしょうか。
大問(所見)で出た問題が中問で改めて出ることはよくあるので、過去問の演習でも意識して取り組みたいですね。
今後も、ERMやソルベンシー確保にまつわる所見が出たときに、ストレステストの話は必ずと言っていいほど論点になるので、丸暗記推奨です。
2-2.利源分析(費差損益・解約・失効益)
問題
(2)金融庁提出用の利源分析手法(決算状況表の一部として提出する利源分析表の様式・基準)における「費差損益」および「解約・失効益」について、次の観点に沿って簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数は1000字)(10点)
・「費差損益」および「解約・失効益」の概要
・採用されている予定事業費枠およびその考え方
・継続率の変動が「費差損益」および「解約・失効益」に与える影響(当初 10 年間は解約控除がある、一般的な平準払定額終身保険を題材に解答すること)
解答
〇「費差損益」および「解約・失効益」の概要
- 「費差損益」は、予定事業費から事業費、税金、その他の費用を差し引いたもの。
- 「解約・失効益」は、主に解約・失効契約の消滅時保険料積立金から解約返戻金、復活契約の失効時保険料積立金を差し引いたもの。
〇採用されている予定事業費枠およびその考え方
- 両建て勘定として用いられている「予定事業費」は、営業保険料に含まれる付加保険料部分であり、「利源枠」に基づいて計算される。
- 「利源枠」とは、予定新契約費のうち一定割合(チルメル歩合)を契約初年度に費消し、それを一定期間(チルメル期間)で償却すると考えて計算した予定事業費枠。
- チルメル歩合を貯蓄保険料全額でも賄いきれない場合には、チルメル歩合の残りの部分を次年度以降費消するものとして計算する。これを限度超過修正という。
〇継続率の変動が「費差損益」および「解約・失効益」に与える影響(当初 10 年間は解約控除がある、一般的な平準払定額終身保険を題材に解答すること)
- 継続率が低下(解約・失効率が上昇)した場合を考える。(上昇した場合は、下記の逆を想定)
- 「費差損益」:
- 予定事業費収入が減少するため、単年度の費差損益は減少する。
- 「解約・失効益」:
- 平準払定額終身保険では、基本的に「解約・失効契約の消滅時保険料積立金>解約返戻金」であるため、単年度の解約失効益は上昇する。
- また、経過年数が10年未満の契約の場合、解約控除によって解約返戻金が抑えられていることから、さらに単年度の解約失効益は上昇する。
- 近年の平準払終身保険は、低解約返戻金型商品がほとんどであるため、実際の分析を行う際には、予定解約率を両建て勘定として設定して、分析することが必要。
解説
『生命保険会計』の利源分析、『事業費の管理・分析』の予定事業費枠からミックスの出題です。
過去問にも出たことがある論点なので、ちゃんと勉強していれば、書きやすい問題ですが、「解約・失効益」にフォーカスを当てた問題は初めてな印象です。
私が受験生の時は、解約控除は費差損益で認識すると思っていたのですが、勉強して責任準備金関係損益で認識することは驚きでした。
合格への戦略という点では、満点は無理でも、「「費差損益」および「解約・失効益」の概要」「採用されている予定事業費枠およびその考え方」で6割ぐらい取れれば、十分合格圏内に入るかなと思います。
一言
中問は過去問を中心に、ちゃんと勉強していれば点が取れた印象です。
またまた宣伝になってしまいますが、アクチュアリー育成塾の試験対策の暗記集を覚えておけば、8割は完璧に取れる内容だったので、私としては一安心です。
今回点がとれなかった人は、改めて勉強をしましょう。もし、「自分で勉強を継続するのが苦手」「なにを覚えたらよいかわからない」という人は、アクチュアリー育成塾の試験対策の無料相談にお越しください。弊塾では、オリジナルの暗記集の暗記を徹底して行うので、合格に最短・最速で近づくことができます。
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