こんにちは、アクチュアリー育成塾の松岡です。
アクチュアリーとして活躍するためには、データ分析能力や保険の専門知識はもちろん必要ですが、それだけでは十分ではありません。どんなに優れた分析を行ったとしても、それを的確に伝えられなければ成果として評価されません。
つまり、「文章力」がアクチュアリーとして働くうえで、重要なスキルです。
本記事では、アクチュアリーにとって文章力がなぜ重要なのか、具体的な書き方のコツ、そして実践方法について解説したいと思います。
文章力が実務で必要な理由
文章の書き方は誰も教えてくれない
学校教育や試験勉強では、「文章の書き方」をしっかりと教えられる機会が意外と少ないものです。
私は卒業論文を書く際に、「論文の作法」は簡単には教わりましたが、「ビジネス文書」の書き方は誰からも教わったことはありません。
しかし、いざ社会人になって、実務を行っていくと、文章を書く機会が頻繁に訪れます。たとえば、次のような場面があります。
- 社内向けの資料作成(経営会議等)
- メールでの上司への説明
- メールでの仕事の依頼
- 社外向けのプレゼン資料作成
- 金融庁への提出資料
アクチュアリーとして働いていると、上記のような場面が多くあり、一日で数十件メールを送り、資料の作成を行うことが普通にあります。
つまり、あなたが作成した文章そのものが、あなたの仕事のアウトプットになります。
したがって、必然的に、文章力が自分の仕事の質や評価につながっていきます。アクチュアリーとして高いパフォーマンスを発揮したいのであれば、文章力を鍛えることが重要です。(一方、社員教育で「文章力」について、教えている会社は少ないように感じます。)
ビジネス文書を書くうえでの大前提
ビジネス文書を書く前に、頭に入れておきたい3つの大前提をお話しします。
1.ビジネス文書では「相手の知りたいこと」を書く
ビジネスの世界で重要なのは、「相手の立場に立って考えること」です。
これは文章作成でも同様で、自分が伝えたい内容を一方的に書くのではなく、「相手の知りたいこと」を意識して書く必要があります。
たとえば、あるプロジェクトの進捗状況を上司に報告する場合、上司が最も知りたいのは「プロジェクトが計画通り進んでいるか」「遅れがある場合、原因と対策は何か」だと思います。無関係な背景説明や詳細説明よりも、伝えたいポイントを簡潔にまとめることが大切です。
2.相手の状況や理解度を把握したうえで書く
「相手の知りたいこと」を書くためには、相手の状況や周辺知識の理解度を把握することが大切です。
具体的には、文章を書く前に、次を頭で思い浮かべてください。
- 誰が読むのか?
例:社長、上司、部下、他部署、お客様、金融庁など - その人が知りたいことは何か?
例:データ分析の結果、打ち手の案など - その人の知識レベルや興味はどの程度か?
例:アクチュアリーに書く場合とそうでない人に書く場合では、書き方や書く量は変わってきます
「相手の知りたいこと」と「相手の理解度」を把握することで、「相手にとって意味のある」文章を書くことができます。
3.自分勝手に書きたいことを書いてはいけない
文章を書く際には、相手の知りたいことを優先することが大切です。
自分の主張や伝えたいことを詰め込むだけでは、独りよがりの文章になります。常に、読み手の視点に立って、文章を書いていきましょう。
3.わかりやすい文書を書くコツ
次に、実務で役立つ具体的な文章作成のコツをご紹介します。
1. 結論から書く
ビジネス文書では、最初に結論を述べる「結論先行型」が基本です。読む相手が最も知りたいことを冒頭で伝えることで、全体の内容が理解しやすくなります。
ビジネスパーソンは基本忙しいものと考えましょう。前置きが長いと、読み手が本題にたどり着く前に興味を失ってしまいます。そのため、最初に結論を示す「結論先行型」の文章がビジネスの世界ではスタンダードとされています。
2. ピラミッド構造で書く
「1.結論から書く」と重なる部分もありますが、ビジネス文書を書く際にはピラミッド構造を意識して書きましょう。
ピラミッド構造とは、「①結論」を先に述べ、その後に「②根拠」および「③詳細説明」を続ける文章構成の方法です。
この構造を意識して文章を書くことで、情報が整理され、読み手にとって分かりやすい文章になります。
特に、アクチュアリー試験の2次試験における所見についても、ピラミッド構造を意識して書くと、書きやすくなりますし、わかりやすい文章になります。
下図は、ピラミッド構造の具体例です。「B事業に参入すべき」という結論を伝えるために、3つの根拠と、それらの詳細な説明があります。
文章を書く際には、このようなピラミッド構造を意識して文章を書くことをお勧めします。
3. その他
他にも、1つ1つは小さなテクニックですが、わかりやすい文章を書く際に心掛けたいことをいくつか紹介します。
- 箇条書きを活用する
- 接続詞に気を付ける
- 具体例を記載する
- 事実と意見を分ける
- 出典を明示する
- 言い切りと曖昧表現を明確に使い分ける
やってみよう!【アクチュアリーへの道】
- 1. 文章を書く前に、相手の立場を想像しよう!
文章を書く前に、読み手がどのような情報を必要としているのかをまず考えましょう。読み手の知識レベルや関心に合った内容を心がけることで、伝わりやすい文章が書けるようになります。 - 2. 文章を書く前に、ピラミッド構造を作ろう!
文章を書く前に、書く内容をピラミッド構造で整理してみましょう。これにより、何を先に書くべきか、どの情報が補足として必要なのかが明確になります。 - 3. たくさん読んでたくさん書こう!
文章力を向上させるには、良い文章を多く読むことも必要です。ビジネス書や新聞、専門誌(アクチュアリー会のジャーナルなど)を定期的に読む習慣をつけましょう。また、日記やブログ、報告書など、文章をたくさん書いて、文章力を磨いていきましょう!
おわりに
文章力はアクチュアリーにとって非常に重要なスキルです。
分かりやすい文章を書くことで、あなたの分析結果や提案の価値がより多くの人に伝わり、自分の市場価値を高めることができます。
本記事で紹介したコツを参考に、日々の業務やアクチュアリー試験に活かしてみてください。
文章を書くことに慣れてくれば、あなたの仕事の質や効率が向上しますし、なにより文章を書くのが楽しくなります!
あなたのアクチュアリーとしての活躍を心から祈念しております!
参考文献(読んでみよう!)
- 『新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(山崎 康司)
文章力を高めたいなら、まずはこの1冊から始めることをおすすめします。
本記事で書いたピラミッド構造の話がもっと詳細に書かれています。
- 『新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント (著), 山崎 康司 (翻訳))
上の書籍の元となっている本はこちらです。『ワークブック』もあるので、そちらで実践するとさらに文章力が高まります。(少し量が多いですが…)
- 理科系の作文技術(木下是雄)
理系の研究者や学生向けの書籍です。卒業論文を作る前に一読しておきたい一冊です。
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