
2021年度の生保1小問の試験問題を解説します。
問題と解答については、日本アクチュアリー会のサイトから引用させていただいております。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/2021/2021G.pdf
1-1.アセットシェアについての実務基準の記述(〇×)
問題
(1)アセット・シェアについての生命保険会社の保険計理人の実務基準(以下、「実務基準」とし、解説書を含む)に関する次の①~⑤について、下線部分が正しい場合は○を記入し、誤っている場合は×を記入するとともに、下線部分を正しい表現に改めなさい。
①実務基準第 23 条(アセット・シェアと代表契約の選定)において、アセット・シェア方式とは、「代表契約の設定などにより、会社の資産の簿価に対する保険契約の貢献度を評価する手法」を指す。②実務基準第 23 条(アセット・シェアと代表契約の選定)において、アセット・シェアに基づく配当確認のために設定した選定単位の代表契約は、実際に当該選定単位に存在する契約である必要がある。
③実務基準第 24 条(当年度末アセット・シェアの確認)において、当年度末アセット・シェアは、以下の考え方に基づいて計算することとなっている。
当年度末アセット・シェア = 前年度末アセット・シェア + 保険料 + 資産運用収益± 評価差額金(税効果控除前)増減額 - 支払保険金など - 予定事業費 - 税金- 支払配当金 ± 法人税等調整額 ± 全社区分調整額④実務基準第 24 条(当年度末アセット・シェアの確認)において、選定した代表契約のアセット・シェアの初期値は、合理的かつ適正に決定しなければならないとされている。このとき、アセット・シェアの初期値が負値となることは認められる。
⑤実務基準第 25 条(将来のアセット・シェアの確認)において、代表契約の将来のアセット・シェアは、金利、株価、保険事故発生率、経費上昇率などのパラメータが、「直近の実績」のまま将来も継続することとして、計算しなければならないとされている。このとき、保険事故発生率の「直近の実績」は、阪神・淡路大震災のような巨大リスクによる保険事故発生分を除外した保険事故発生率とすることができる。
解答
① ×:時価
② ×:はない
③ ×:事業費
④ ○
⑤ ○
解説
『生命保険会社の保険計理人の実務基準』からの出題です
①と③については過去問でも頻出であり、教科書にも記載があるため、落としたくない
②④⑤については、『「生命保険会社の保険計理人の実務基準」解説書』からの出題であるため、見たことない受験生が多かったかもしれません
④⑤はなんとなく予想がつくと思いますが、②は分からないかもしれないですね
ここで、1、2点落としても問題ないと思います。しかし、今年の受験生は解説書にもしっかり目を通しましょう
日本アクチュアリー会の会員ページから、実務基準の解説書にアクセスできます
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1-2.団体生命保険の配当清算法について
問題
(2)団体生命保険の配当清算法について、次の①~⑤に適切な語句を記入しなさい。
配当清算法では、以下の算式による剰余金が、経験配当として契約者に還元される。
剰余金 = 収入保険料 - 保険金費用 - 事業費 + 発生利息 - 剰余金に対する費用
保険金費用の決定においてはプール方式が導入され、このプール方式には ①方式と②方式がある。
これらの方式のうち ②方式では、団体ごとにその規模、経験年数等に応じて一定額を定め、
保険金費用 ={「発生保険金」と「定めた一定額」の ③ 額}+ プーリング保険料
となる。実際には ① 方式と ② 方式のいずれか、または両者の組合せの方式を基礎として保険会社ごとに独自の手法・数値が使われる。
また、剰余金に対する費用については、
・④に対する準備金
・保険会社のマージン
・配当の一部団体内部留保分、すなわち将来的に保険料がアップした場合に備えての調節財源
・ ⑤
で構成する。
一般に、剰余金がマイナスの場合には、その団体の損として翌年度以降に持越し(Carry Forward)が行われる。損を繰越している団体が消滅した場合には、その累積赤字分は全額保険会社の負担となる。⑤は、この累積赤字分を充当するためのものである。
解答
① 信頼度
② 損失限度
③ 小さい
④ 異常危険
⑤ 危険賦課金
解説
教科書そのままですね
団体生命保険は大問で出ることは少ないですが、年に1問はかならず小問か中問で出るので、しっかり覚えましょう
この問題は覚えたもの勝ちです
ちなみに危険賦課金は教科書ではRisk Chargeと載っているので、私はこっちで覚えてました
(なんかかっこいい名前だなっていう理由だけです笑)
1-3.監督指針「Ⅳ-5-3 契約者価額」
問題
(3)保険会社向けの総合的な監督指針「Ⅳ-5-3 契約者価額」(令和3年8月改正)について、次の①~⑤に適切な語句を記入しなさい。
Ⅳ-5-3 契約者価額
(1)解約返戻金については、支出した事業費及び①の損失、保険設計上の仕組み等に照らし、合理的かつ妥当に設定し、保険契約者にとって不当に不利益なものとなっていないか。
(2) ② を利用した商品について、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる ③ や、解約に伴う運用資産の売却に係る ④ 等に備えるために係数を定める場合、その係数については、⑤の高度化や解約に伴って見込まれる
④ との整合性等に照らして、合理的かつ妥当な水準に設定し、保険契約者にとって
不当に不利益なものとなっていないか。
解答
① 投資上
② MVA
③ 金利変動
④ 取引費用
⑤ リスク管理
解説
『保険会社向けの総合的な監督指針』からの出題です
近年の国内の低金利環境(内外金利差の拡大)を受けて、一時払外貨建保険の発売が急増しており、MVAによる苦情が増えていました。
それを背景とした監督指針の改正部分からの出題です
アクチュアリー試験では監督指針等、改正後の部分から出題されることが多いので、受験生は直近の改正履歴については、キャッチアップを丁寧に行ってください
1-4.転換制度について
問題
(4)転換制度について、「転換価格」の構成要素を3つ挙げなさい。また、「転換価格」以外に転換前契約から引き継がれるべき要素を3つ挙げなさい。
解答
【構成要素】
転換時点での契約者価額としての保険料積立金、支払を据え置いた給付金、配当の積立残高
※この他にも「契約者貸付の精算」など正しい記述に対して適宜加点した。【引き継がれるべき要素】
自殺免責ルールの起算点、危険選択における転換前の保障額、解約控除
※この他にも「契約者配当の権利」など正しい記述に対して適宜加点した。
解説
4章:生命保険の商品開発からの出題です
2020年度に「更新」から出ていたので、その周辺を対策しておけば問題なかったでしょう
ちなみに転換制度を行っていない会社は意外とありますので、この辺はきちんと対策をしておかないと辛かったかもしれませんね。
また、無解約返戻金商品からの転換については、『第2章解約および解約返戻金』にも記載がありますので合わせてチェックしてみてください
商品開発アクチュアリーとしては、この第4章が実務に役立つので、商品開発に興味ある受験生は試験の枠を超えて読み込むことをお勧めします
1-5.自動再保険と任意再保険
問題
(5)自動再保険と任意再保険について、両者の違いが分かるように、簡潔に説明しなさい。
解答
自動再保険と任意再保険は契約手続きから見た区分である。自動再保険は、再保険協約で予め再保険の範囲・条件を定めておき、元受会社はそれに該当したリスクを義務的に出再し、再保険会社はそれを義務的に受再する再保険の形態をいう。任意再保険では、1リスクごとに元受会社が出再するか判断し、再保険会社はそれを受再するか判断する権利を有している。自動再保険は、出再時の事務が簡便なので大量のリスクを出再する場合に適している。任意再保険は、元受会社が再保険会社に条件体契約等の査定を依頼する場合に広く用いられている。
解説
再保険の章では、2つの比較で教科書も記載されていることから、比較問題が良く出ます
(伝統的な目的VS非伝統的な目的、比例式VS非比例式、自動VS任意などなど)
再保険も大問で出ることは少ないですが、1年に1問は小問か中問で出るので、隅々まで覚えましょう
1-6.収益検証における確率論的手法のメリットデメリット
問題
(6)商品毎収益検証の手法である「確率論的手法」について簡潔に説明し、「確率論的手法」に特有のメリット・デメリットについても挙げなさい。
解答
確率論的手法とは、非常に多くのシナリオや確率分布を仮定し、その仮定に基づき将来のキャッシュフローを推計する手法である。シナリオ毎のキャッシュフロー(シミュレーション)から現在価値の期待値や分布などを求める方法や、確率分布をもとに解析的に求める方法がある。
【メリット】
・複雑な商品であっても、現在価値の分布・分散を把握する事が容易である。
・確率による重みづけが可能である。
・変額年金保険など、オプション性のある商品の収益検証に有用である。
・分布のすそ野が広い商品の収益検証に有用である。【デメリット】
・計算負荷が大きい。
・単純化されたシナリオでないと解析的に求めることが出来ない。
・結果の再現が出来ない(容易ではない)場合がある。
・計算する度に結果が異なる場合には、客観性の担保が困難となる。
・異常値として考慮しなかった極端なシナリオがある場合には、その影響を把握できない。
解説
確率論的手法と決定論的手法の違いですね。
過去の大問でも出ているので、覚えている受験生は多かったのではないでしょうか
所見でも使える部分なので、すらすら言えるように覚えておきましょう
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