【生保2】2025年度解答速報#3(大問)

松岡
松岡

2025年度の生保2大問の試験問題を解説します。



※本解答速報は、試験問題に対する参考解答を提供するものであり、公式解答ではありません。正確な解答は、日本アクチュアリー会が発表する公式情報をご確認ください。
本情報の作成には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。本速報を利用することで生じるいかなる結果についても、当方は責任を負いかねます。
間違えている箇所がございましたら、以下のフォームよりご連絡ください。
<解答速報の修正・誤植のご指摘はこちら>
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfMHRNv04jQCeCpwKwtYm0k6e1bsNb23Hw7X4GHggitz-0xtg/viewform?usp=sharing&ouid=105148279218788588129

たか様に作成のご協力をいただきました。誠にありがとうございました!

問題については、日本アクチュアリー会のサイトから引用させていただいております。

2025-H-1212.pdf

3-1

問題

問題3.次の(1)、(2)の各問に答えなさい。 

各25点(計50点) 

[解答の制限字数について] 
・解答にあたっては、問題文(解答欄)に記載されている制限字数に留意すること。 
・制限字数は解答字数の上限であって目安ではない。 

(1)次の(ア)~(ウ)の各問に答えなさい。(計25点) 

あなたは次のような状況にある生命保険会社のアクチュアリーである。 

<所属会社の状況> 

・会社設立からの経過年数が長く、これまで営業職員チャネルを通じて有配当の平準払円建保険(定期保険や終身保険等。以下、「既存商品」)を販売してきた。 

・近年、新たにインターネットチャネルを設け、無配当の平準払円建積立保険(以下、「新商品」)を発売した。新商品の予定利率は、他社との競合を考慮し競争的な水準に設定しているが、保険期間を通じて一定である。 

・新商品の発売当初に大規模なWebCMを行った結果、多くの新契約を獲得した。 

・この新商品の契約者に対し、既存の営業職員チャネルからもアプローチを行い、既存商品の販売拡大にもつなげる計画である。 

・この新商品の発売にあたり、区分経理における資産区分・商品区分を新たに設定し、当該商品区分に全社区分から出資を行った。 

  1. 一般論としての内部管理会計の意義および必要性について、現行法定会計の特徴と限界に触れつつ、簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数は500字)(5点) 
  2. 上記新商品が属する商品区分に関し、当該商品発売当初の費差損益および責任準備金関係損益(金融庁提出用の利源分析手法における利源)の状況についてそれぞれ簡潔に説明しなさい。なお、問題文に記載していない事象(金融環境や顧客行動の急激な変化等)を考慮する必要はない。(解答の制限字数はそれぞれ250字)(4点) 
  3. 上記新商品の収益管理に際して留意すべき事項を挙げ、アクチュアリーとして所見を述べなさい。なお、解答にあたっては次の観点を含めること。(解答の制限字数は3000字)(16点) 

A.上記新商品を区分経理する意義 
B.損益把握上の留意点 
C.チャネル・商品間の相乗効果の評価

解答

(ア)

(ア)

<意義>法定会計の限界を補完

法定会計(ソルベンシー確保目的)やGAAP会計(投資家への情報提供目的)が提供する情報は、経営者の迅速かつ的確な経営判断に必ずしも役立つものとは限らない。

内部管理会計は、この限界を補完し、経営判断に資する会計情報を提供することを目的とする。その存在意義は、「経営成績や期間損益の的確な把握」および「収支構造の詳細な把握」などにある。

<必要性>長期性と複雑性への対応

現行の法定会計(標準責任準備金制度など)は、支払能力の確保を重視する保守的な会計。

・経営成績・期間損益の把握の必要性

法定会計では、新契約獲得が単年度利益にマイナス影響を与えるなど、経営活動の結果を適切に表示できない。このため、現在の経営状況を適切に評価できる期間損益の把握を目的とした内部管理会計が必要。

・収支構造の把握の必要性

生命保険会社は、事業環境の急激な変化や商品・チャネルの多様化に直面しており、従来の一括管理手法が限界を迎えている。リスク管理と利用者ニーズへの対応のため、法定の区分経理をさらに細分化し、保険種類別、プロダクト・ライン別などの詳細な収支構造を把握する内部管理会計が不可欠となっている。

(イ)

【費差損益の状況】

金融庁提出用の利源分析では、予定事業費枠として5年チルメル式の利源枠が用いられる。新契約獲得のため大規模なWeb CMを実施したことで、事業費支出が契約当初に集中し、高額となると想定される。しかし、予定事業費収入(利源枠)は保険期間を通じて一定程度平準化して認識されるため、特に発売当初は実際の支出が予定収入を大きく上回り、結果として費差損が発生する状況となる。

【責任準備金関係損益の状況】

・直近の金利上昇を踏まえると、平準払い保険は、過去3年平均と10年平均の低い方の国債利回りを予定利率で使用することから、保険料計算用の予定利率より責任準備金計算用の予定利率のほうが低いことが想定されるため責任準備金の積み増し負荷が発生。

・新契約が多数獲得された当初は、将来の保険金支払いに備えて責任準備金への繰入額が大きく増加する。金融庁提出用の利源分析手法においては、この責任準備金繰入額の増加分(または諸積増の増加分)は責任準備金関係損益として計上されるため、責任準備金関係損となる。

これらは、費差損と並んで、新契約獲得が単年度利益を圧迫する主要因となる。

(ウ)

A.上記新商品を区分経理する意義

新商品が既存商品と異なる商品区分および資産区分に区分経理された意義は、保険契約者間の公平性の確保と事業運営の健全性・効率性の向上にある。

・公平性の確保と内部補助の遮断

既存商品が有配当保険であるのに対し、新商品は無配当保険である。公正かつ衡平な配当の原則に基づき、有配当契約と無配当契約間で剰余金の分配や損失の帰属に関する相互補助を遮断し、保険経理の透明性を確保することが必須である。

・リスク特性と収支構造の明確化

新商品は、既存商品と異なり積立型(貯蓄性)利差益に大きく依存するため、金利変動リスクへの感応度が高い。また、インターネットチャネルという新たな販売経路に伴い、事業費支出の構造が既存チャネルと大きく異なる。これらの異なるリスク特性と収支構造を明確化し、それぞれに適合したALM(資産負債管理)リスク管理を独立して行うことが求められる。

・事業運営の効率化と健全性確保

新事業である新商品の収支状況を独立してモニタリングし、経営資源の適切な投入を判断するために、区分経理は有効である。また、新商品区分は全社区分から出資を受けているため、この出資の返済計画と、当該区分がセルフサポート(自己支援)可能であるかどうかの健全性を、独立した単位で厳格に検証する必要がある。

B.損益把握上の留意点

新商品の収益管理においては、法定会計の制約を理解し、その限界を補うための多角的な分析が不可欠である。

・単年度損益の誤解の排除とEVの活用

新商品発売当初は、大規模なWeb CM費用の支出集中と予定事業費収入の平準化により、法定会計上の費差損が発生する。これは、既存商品も含めた新契約獲得という将来の収益確保のための先行投資であるにもかかわらず、単年度では損失として計上されるため、経営成績を過小に評価してしまう。

この費差損を先行投資であることを説明し、エンベディッド・バリュー(EV)や新契約価値の収益指標を併用して、企業価値への真の貢献度を把握する必要がある。変動要因分析を行い、新契約獲得による価値増加を明確に経営層に伝えるべきである。

・間接費の配賦基準

既存の営業職員チャネルのサポート部門や、全社共通の管理部門の間接費を、新商品区分にどのように配賦するかという基準の設定が必要です。単純な保険料比例ではなく、システム利用時間、契約件数、あるいは人員数など、費用発生の真の原因を最もよく反映する配賦基準を導入し、費用を適切に配賦する。

・資産運用リスク(利差損リスク)の適切な把握

新商品は積立型であり、収益は主に利差益に依存する。予定利率が競争的な水準に設定されているため、市場金利の動向によっては将来の逆ざやリスク(予定利息>運用収益)を抱える可能性が高い。法定会計では責任準備金がロック・イン方式で固定されるため、金利変動による資産評価額とのミスマッチが財務に与える影響は限定的となるが、真のリスクを評価するため、金利リスクを考慮した将来収支分析(1号収支分析)や経済価値ベースでの評価を定期的に実施し、将来にわたる積立不足が生じないかを確認する必要がある。
無配当商品であるため、配当によるリスク吸収バッファーがないことに留意し、競争的な予定利率を設定する際には、健全性維持のため内部留保を厚くする方針も検討し、その状況をモニタリングする。

・区分経理内の資金管理

新商品区分への出資は、当初の費差損や責任準備金関係損を一時的に補填するための措置であるため、資金の返済計画を策定し、当該区分の収支(キャッシュフロー)自立的に資金調達と返済をできる健全な経営が行われていることを確認する。

C.チャネル・商品間の相乗効果の評価

既存顧客へのアプローチを通じた既存商品の販売拡大という計画の達成度合いを評価するため、多面的な観点から相乗効果を評価することが重要である。

・費用と収益の貢献度評価

新商品チャネル(インターネット)で発生した費用(Web CM費、運営費など)が、既存チャネルの既存商品の販売拡大という収益に貢献した場合、その費用配賦の基準を明確に定義する必要がある。

費用と収益の対応関係を正確に把握するため、新商品の販売が既存チャネル経由の既存商品販売に与えた貢献度を、新契約価値や、経済価値ベースの指標を用いて定量化する。例えば、インターネットチャネル経由の顧客属性と既存チャネル経由の顧客属性を比較し、相乗効果を検証する。

・リスク分散効果の検証

既存商品と新商品は異なるリスク特性(死亡保障/貯蓄性、有配当/無配当)を持つため、両商品の販売が進むことで、グループ全体のリスクポートフォリオにおいてリスク分散効果が生じる可能性がある。統合的リスク管理(ERM)全社的な経済資本を定期的に計測し、リスク分散による必要資本の軽減効果を経済価値ベースと財務会計ベースの両方で評価する。

・経営戦略へのフィードバック

相乗効果の評価結果に基づき、販売チャネル間の経営資源(広告宣伝費、営業職員への報酬体系など)の最適な配分を検討する。特に、既存商品は有配当契約であるため、既存商品の販売拡大に向けたインセンティブ(報酬)を設計する際には、既存契約者間の配当の公正性を損なわないよう、配当財源の安定性と配当政策との整合性に留意する必要がある。評価された相乗効果(プラスまたはマイナス)を今後の商品開発方針やプライシング、チャネル戦略にフィードバックし、持続的な企業価値向上に繋げるPDCAサイクルを確立することが求められる。

3-2

問題

(2)経済価値ベースの保険負債評価について、次の(ア)~(ウ)の各問に答えなさい。(計25点)
(ア)経済価値ベースの保険負債評価の概要について、現行の法定会計における責任準備金評価との相違を踏まえて簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数は1000字)(5点)

(イ)保険負債の評価前提に関し、「死亡率前提の上昇」「解約率前提の上昇」が経済価値ベースの保険負債評価額に与える影響を、逆ざや状態の平準払終身保険契約の評価を題材に、それぞれ簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数はそれぞれ300字)(4点)

(ウ)あなたの会社では、経済価値ベースの保険負債評価を内部管理として経営に活用することを検討している。アクチュアリーとして留意すべき点について、活用目的を踏まえて所見を述べなさい。なお、解答にあたっては次の観点を含めること。(解答の制限字数は3500字)(16点)
A.経済価値ベースの保険負債評価の意義と留意点
B.非経済前提(死亡率や解約率等)の設定方法と留意点
C.前提条件・モデル・評価結果の妥当性向上、関係者の理解促進
※2025 年度末から適用が予定されている「経済価値ベースのソルベンシー規制」については説明する必要はない。

解答

(ア)

(ア) 

ストレステストは、生命保険会社が将来の不利益が財務の健全性に与える影響をチェックし、必要に応じて経営上または財務上の対応をとっていくための、統合的リスク管理(ERM)における重要なツールである。

従来のVaR(バリュー・アット・リスク)のようなリスク計測手法は、過去のデータや統計的手法に依存しているため、市場が大きく変動している状況下や、低頻度だが影響の大きい事象(テールリスク)の発生時に、リスクを正確に予測し捉える能力に限界がある。ストレステストは、こうしたVaRによるリスク計測の限界を補完することを目的としている。

ストレステストの主な意義として、シナリオ設定の自由度が高く、自社の経営に重大な影響を与える事象を包括的かつ具体的に捉えることができる点が挙げられる。また、ストレス事象が生じた際に、どのようなリスクが連鎖的に顕在化するかを把握しやすい。

さらに、リバース・ストレステストを通じて、会社が存続できない状態となるような極端なシナリオを特定し、そのリスクの要因を特定することで、危機管理計画(BCP)の策定や検証、およびリスク許容度の妥当性を評価するための重要なインプットを提供する。

(イ)

(イ) 

 A.想定される主要リスク(全社的な観点も含めること)

ストレステストにおいては、各商品群が内包する個別のリスクに加え、それらが複合的に全社的な財務に与える影響を評価することが不可欠である。

〇市場リスク

・金利リスク

貯蓄性の高い一時払終身保険を保有しているため、金利が予定利率を下回る水準で長期にわたって推移するシナリオ下では、再投資利回りの低下による逆ザヤ(予定利率リスク)デュレーションが超長期の負債に対しては、市場にマッチング可能な長期資産が不足しており、再投資リスクが重大なリスクとして顕在化する。

・株式リスク

資産サイドでの保有株式やファンドの価値が下落し、資本の毀損を招く。

・為替リスク

一時払終身保険に外貨建契約が含まれる場合、急激な円高は、外貨建資産の円換算価値を減少させる為替リスクとなる。

・信用リスク: 保有する社債や投資先の信用スプレッドの拡大は、資産価値の低下として全社的なソルベンシーを脅かす。

〇保険引受リスク

・罹患/第三分野リスク: 平準払終身医療保険(第三分野)は長期にわたる保障を提供するため、医療技術の進歩や社会環境の変化に伴う罹患(発生)率の継続的な悪化(上昇)が主要なリスクであり、特に統計データが不足している分野であるため、その不確実性が大きい。

・解約リスク(オプション性):

*動的解約

一時払終身保険は貯蓄性が高いため、金利上昇局面で他の金融商品への乗り換えを目的とした大量解約が集中するリスクを内包する。これは流動性リスクと複合し、重大な損失を引き起こす可能性がある。

*リスク濃縮: 10年更新型定期保険は、健康な契約者が解約し、リスクの高い層が残存する逆選択(リスク濃縮)のリスクがあり、更新時に死亡率が悪化する。

・死亡率リスク

死亡率の急上昇は、大規模災害やパンデミックにより、定期保険(死亡保障)で巨額の保険金支払いが発生する。

死亡率の低下(長寿化)は終身医療保険や終身保険の責任準備金が不足する可能性がある。

〇全社的リスク・その他リスク

・流動性リスク

大量解約やデリバティブ取引に伴う追加担保要求が発生した場合、含み損の資産を売却せざるを得なくなり、売却損を計上するリスク(清算価値リスク)が流動性リスクとして顕在化する。

・複合リスクとモデルリスク

各リスク間の相関の崩壊(例:金利上昇と株価暴落の同時発生)や、大規模災害・パンデミック(罹患率と死亡率の同時上昇、市場混乱)による連鎖的影響は、全社的な複合リスクとして想定される。また、解約率や罹患率など、統計的裏付けが不十分な分野のモデル化の誤謬(モデルリスク)も重大なリスクとして認識すべきである。

・保険業継続リスク

金融庁や格付け会社で確認される項目は、求められる一定水準を下回るリスクがある。特に金融庁によるソルベンシー規制は、保険業の業務停止命令が下される場合もある。

・オペレーショナルリスク

大規模なシステム障害、サイバー攻撃、法令違反など

B.ストレスシナリオの設定

ストレスシナリオは、単なる過去の延長線上ではなく、特にテールリスクや複合的な影響を検証できるように設計することが重要であり、その設定は蓋然性を考慮する必要がある。

〇金利/ALMストレスシナリオ

・極端な金利低下シナリオ

一時払終身保険などの貯蓄性負債のリスクを検証するため、イールドカーブ全体が長期にわたり大幅に低下し、逆ザヤが継続するシナリオを策定する。

・急激な金利上昇シナリオ: 流動性リスクと動的解約リスクの検証のため、金利が短期間で急激に上昇し、保険負債の時価が低下すると同時に、貯蓄性契約の大量解約による資産の強制売却が発生するシナリオを設定する。特に2026年度より導入される経済価値ベースのソルベンシー規制においては、大量解約リスクが保険引受リスクの一つとして計測され、金利上昇時にはESRが大幅に低下する。

・イールドカーブの変化: 長期負債の評価の変動を的確に捉えるため、金利の平行移動だけでなく、ツイスト(イールドカーブの傾斜変化)やベンド(イールドカーブの曲率変化)を組み合わせたシナリオを設定し、デュレーションミスマッチの影響を評価する。負債を経済価値ベースで評価する場合の割引率のUFRやスプレッド等も大幅に変化する可能性がある。

〇罹患率/第三分野リスクシナリオ

・継続的な罹患率上昇: 平準払終身医療保険の積立水準の十分性を検証するため、罹患率(発生率)が長期的に予想を大幅に上回って推移するシナリオを設定する。特に、社会的な要因や医療技術の進歩を考慮し、第三分野ストレステストで要求される水準を超える、極めて厳しいストレス水準も検討する。

〇複合リスクシナリオ

・大災害/パンデミックシナリオ: 死亡率・罹患率の急激な上昇(保険金支払増)に加え、金融市場の混乱(株価・金利変動、信用スプレッド拡大)や流動性リスク(解約集中、追加担保要求)が同時に発生する複合的なシナリオを設定する。特に、外貨建契約が多い場合は、為替リスクの変動も組み込む。

過去のシナリオとしては、リーマンショックやスペイン風邪・コロナショック等が参考になる。

〇シナリオ設定のガバナンスと留意点

・シナリオ設定に際しては、取締役会においてリスク管理方針を明確に定め、統合リスク管理の計量化手法では捉えきれない非計量リスク(オペレーショナルリスク等)も考慮する。

・設定されたシナリオは、結果の説明や対応策の検討に資するように蓋然性を考慮する必要があり、極端な悲観的シナリオに偏りすぎないよう留意する。

C.テスト結果の活用方法

ストレステストの結果は、単年度の財務影響確認に留まらず、リスクリミットの設定、資本政策、および危機管理の意思決定に活用し、ERMの高度化に繋げることが重要である。

〇リスク管理・資本政策への活用

・健全性指標の充足性検証

ストレスシナリオ下におけるソルベンシー・マージン比率、実質資産負債差額、および経済価値ベースの自己資本(サープラス)への影響を評価し、リスク許容度(リスクリミット)を逸脱していないか検証する。

・資本充実策の検討

ストレス顕在化時に資本不足が発生すると見込まれる場合、その不足を補うための内部留保(危険準備金等)の積み増し計画や、劣後債務の調達に関する意思決定に活用する。

・リスクリミットの再設定: テスト結果に基づき、リスク量とストレス耐性を比較することで、商品ポートフォリオ、資産配分、チャネルごとのリスクリミットを検証・見直す。

〇ALM戦略と商品設計へのフィードバック

・ALM戦略の評価: 金利ストレス下での資産・負債のデュレーション変化を分析し、ヘッジ戦略や資産ポートフォリオの組替えの有効性を検証する。特に、外貨建リスクヘッジのカウンターパーティリスクについても検証する。

・罹患率前提の検証: 医療保険のリスク分析結果を、保険料計算の基礎となる予定発生率の妥当性の事後検証に利用し、必要に応じて、料率改定や引受基準の変更を検討する。

・商品設計の調整: 解約リスクやALMリスクが高い商品については、MVA(市場価格調整)の導入や金利変動型への移行、または販売停止ルールの策定など、リスクを軽減するための商品戦略にフィードバックする。

モデルの限界の特定と改善

テスト結果が直感に反したり、特定のシナリオでモデルが不適切な結果を出したりした場合、モデルのパラメータ設定、リスクファクター間の相関仮定、および計算手法の限界を特性するため、モデルの改善を行う。

〇業務継続体制(BCM)への活用

・危機対応の具体化

ストレスシナリオ(例:大災害)下での保険金支払業務の継続性やシステム復旧にかかる業務への影響(オペレーショナルリスク)を定量的に評価し、コンティンジェンシープラン(CM・BCP)の実行可能性と実効性を検証する。

・流動性危機への対応: 流動性リスクに関する分析結果に基づき、流動性資産の適切な保有水準を評価し、緊急時の資金調達手段の確保・検証を行う。

その他アクチュアリーとしての所見

・アクチュアリーは、ストレステストの結果を単なる定量的データとしてではなく、経営者が理解できるよう、リスクとリターンのバランスや経営戦略上の含意を明確にして報告し、経営層によるリスクに関する意思決定を支援する必要がある。

・結果が芳しくない場合でも、その結果を真摯に受け止めるよう経営層に働きかけ、全社的なリスク文化の醸成を促すことが、ERMを実効的なものとする上で不可欠である。

一言

全体の所感としては、基本的な問題が多く、直近の金利上昇がテーマになっている問題が多かったです。
第一部は、対策していた受験生が多かったであろう問題が多数でした。得点調整等がなければ第一部の足切りを突破した受験生が多いことが想定され、第二部の相対評価で勝負が決まるのではないでしょうか。
第二部も、金利上昇により各社が貯蓄性を販売再開したことがテーマでした。自社のみならず他社の新商品動向や直近の市場環境にアンテナを張っていた受験生には問題予想はしやすかったと思います。とくにストレステストでは来年度に導入を控えるソルベンシー規制(第1の柱、第2の柱)の理解の差で、得点差がつくと予想します。

今回点がとれなかった人は、改めて勉強をしましょう。

もし、「自分で勉強を継続するのが苦手」「なにを覚えたらよいかわからない」という人は、アクチュアリー育成塾の試験対策を覗いてみてください。弊塾では、オリジナルの暗記集の暗記を徹底して行うので、合格に最短・最速で近づくことができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました