【生保2】2025年度解答速報#2(中問)(アクチュアリー試験)

松岡
松岡

2025年度の生保2中問の試験問題を解説します。



問題については、日本アクチュアリー会のサイトから引用させていただいております。

2025-H-1212.pdf

※本解答速報は、試験問題に対する参考解答を提供するものであり、公式解答ではありません。正確な解答は、日本アクチュアリー会が発表する公式情報をご確認ください。
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たか様に作成のご協力をいただきました。誠にありがとうございました!

(以降の解答例は制限字数に拘らず幅広く論点を記載しており、答案に全量を記載することを期待しているものではなく、また、項立ても一例にすぎない。下記の論点等を参考に、各自の所見を分かりやすく制限字数内で記載してほしい。)

2-1

問題

[解答の制限字数について] 
・解答にあたっては、問題文(解答欄)に記載されている制限字数に留意すること。 
・制限字数は解答字数の上限であって目安ではない。 

  1. 生命保険会計の意義および特徴について簡潔に説明しなさい。
    (解答の制限字数は1000字)(10点)

解答

問題2.(1) 

<意義>

○生命保険会計とは、生命保険会社の支払能力の状況、あるいは活動の実態等を金銭で評価し、会計の言葉で表現すること。

○会社法および企業会計原則等に則った会計処理を行うという点では一般会社と同じだが、契約者保護の観点から生命保険会社の健全化を図るための特別の規定が保険業法に存在。

○一般の企業会計は「債権者および投資家の保護」に力点が置かれているが、生命保険会計は契約の全期間にわたり契約者保護が確実に遂行されるよう生命保険会社の「支払能力確保」を重視した会計を指向。

○国際的な傾向として、財務会計として一般企業と同じ尺度での比較が求められているが、日本では、保険業法による会計が唯一の法定会計。

○保険業法による会計だけで生命保険会社の情報を十分に表現できるものではないことに留意が必要(業法会計では、保険販売の成果は超長期に亘って利益計上されるなど)。

<特徴>

○保険期間の超長期性

・生命保険契約は契約の全期間を通じて生じる一定の偶発事故に対して保険給付の支払いを約し、その契約期間は超長期。そのため、生命保険会社は超長期に亘って適正な支払能力の確保が必要。この点から資産評価の保守性と支払準備のための準備金の充実という特性が生じる。(たとえば、資産評価を清算価値とすることや、危険準備金・追加責任準備金を積み立てるなど)

・支払能力の確保と期間損益の把握は表裏の関係にあり、支払能力の評価により期間損益の評価(利益)も異なる。真の利益は群団の消滅まで確定しない。

○群団性

・保険制度は大数の法則を前提としており、目的毎に一定の群団を設定し、群団間の公平性を図りつつ支払能力の確保を図る。特に責任準備金の評価においてこの群団性を前提とした解釈をすることが必要。

・例えば、契約件数が極端に少ない場合、群団として成立させることには無理があり、他の保険に統合する等の工夫が必要。

・事業費は契約初年度と次年度以降で水準が大きく異なるため、収益・費用の対応を目的とした会計では、新契約の世代毎に群団を分け、チルメル式等の考慮を行うこともありうるが、世代をまたいだ1つの群団として維持・管理し、世代間で相互扶助を行いながら支払能力の確保を図るという解釈もありうる。

○保険料の構成要素の多様性

・保険料計算基礎には複数の要素(予定利率、予定死亡率、予定事業費率等)があり、平準保険料方式を採用。この前提から、収益である保険料を費用に対応させる方法は、その目的に応じ様々考えられるが、普遍的に正しい方法があるわけではない。

○まとめ

・保険契約の長期性、支払能力の確保等の特性を考慮したうえで、毎期の利益をどう評価するかは極めて重要な課題。これには、保険数理の技法が強く要請されるが、これはアクチュアリーの大きな職務の一つである。

2-2

問題

(2)契約者配当財源(ここでは決算に基づく配当可能利益のうち、実際に配当として分配する額のことを指すこととする)の決定要因について、次の観点に沿って簡潔に説明しなさい。(解答の制限字数は1000字)(10点) 


・責任準備金の評価方法 
・ソルベンシー確保 
・契約者配当の安定性維持・向上 
・通常配当と特別配当

解答

問題2.(2) 

○責任準備金の評価方法

配当財源の計算の基礎となる決算時の利益は、資産と負債(主に責任準備金)の評価によって大きく影響を受ける。負債の大部分を占める責任準備金の評価方法(計算基礎率や積立方式)は、単年度の利益額を決定する上で最も重要な要素。この捉え方によっては、決算時の利益を、契約者配当財源とソルベンシー確保のための内部留保にどのように振り分けるかのバランスに問題が生じる。

○ソルベンシー確保

契約者配当財源を決定する際の最優先事項は、保険会社が契約の全期間にわたり確実に債務を履行できるという健全性(ソルベンシー)を確保すること。公正・衡平な配当の要件としても、責任準備金が適正に積み立てられ、かつ、会社の健全性維持のための必要額が準備されている状況で配当所要額が決定されることが求められている。実務上、この健全性確保のため、標準責任準備金制度のほかに、危険準備金や純資産の準備金(損失てん補準備金など)といった内部留保をどれだけ充実させることが課題となる。生命保険事業の利益は変動する要素を含むため、不安定な要素に対応できる支払余力を確保することが求められ、単年度で計上された利益のすべてを還元することは適切ではない。

○契約者配当の安定性維持・向上

生命保険契約は長期にわたる契約であるため、配当には安定的継続が求められる。この安定性を実現するため、配当財源の決定においては、利益の変動性に過度に左右されないような配慮が必要。

毎年の利益のうち、配当に反映させずに残した部分は、将来の安定配当のための配当財源として、社員配当平衡積立金などの準備金に内部留保される。また、契約者配当のために資産を流動化(現金化)する場合、運用利回りが低下する可能性や、将来の利益増加の機会を失う可能性があり、この点を慎重に考慮し、内部留保と還元のバランスをとることが必要。

○通常配当と特別配当

生命保険会社の利益の特質から、毎年の剰余は変動する要素を含んでいる一方、保険契約は長期にわたる契約であることから、毎年の契約者配当は安定性が求められる。したがって、毎年の利益の全額のうち契約者配当として還元する残りの部分については、将来の安定配当のための配当平衡財源として会社に留保しておくべきと考えられる。一方、この結果として、毎年の利益のうちで毎年の契約者配当には反映されない部分が発生することになる。また、株式含み益のように、毎年の利益には反映されないが、実質的には会社の資産価値増加分として、会社の内部留保的性格を持つものとして形成されてくる部分もある。こうした毎年の通常配当で還元できない利益の未精算部分や、毎年の通常配当の対象とならなかった部分を契約者還元する部分として、特別配当が設けられている。この部分について、資産形成の貢献度と(自契約脱退後の残存契約群団を含めた)契約群団の健全性確保のための内部留保とのバランスにも留意する必要がある。

一言

全体の所感としては、基本的な問題が多く、直近の金利上昇がテーマになっている問題が多かったです。
第一部は、対策していた受験生が多かったであろう問題が多数でした。得点調整等がなければ第一部の足切りを突破した受験生が多いことが想定され、第二部の相対評価で勝負が決まるのではないでしょうか。
第二部も、金利上昇により各社が貯蓄性を販売再開したことがテーマでした。自社のみならず他社の新商品動向や直近の市場環境にアンテナを張っていた受験生には問題予想はしやすかったと思います。とくにストレステストでは来年度に導入を控えるソルベンシー規制(第1の柱、第2の柱)の理解の差で、得点差がつくと予想します。

今回点がとれなかった人は、改めて勉強をしましょう。もし、「自分で勉強を継続するのが苦手」「なにを覚えたらよいかわからない」という人は、アクチュアリー育成塾の試験対策の無料相談にお越しください。弊塾では、オリジナルの暗記集の暗記を徹底して行うので、合格に最短・最速で近づくことができます。

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