【損保1】2025年度解答速報#2(中問)(アクチュアリー試験)

松岡
松岡

2025年度の損保1中問の試験問題を解説します。



問題については、日本アクチュアリー会のサイトから引用させていただいております。

https://www.actuaries.jp/examin/2025exam/20251212/2025-I-1212.pdf

※本解答速報は、試験問題に対する参考解答を提供するものであり、公式解答ではありません。正確な解答は、日本アクチュアリー会が発表する公式情報をご確認ください。
本情報の作成には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。本速報を利用することで生じるいかなる結果についても、当方は責任を負いかねます。
間違えている箇所がございましたら、以下のフォームよりご連絡ください。
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えぬ様に作成のご協力をいただきました。誠にありがとうございました!

(以降の解答例は制限字数に拘らず幅広く論点を記載しており、答案に全量を記載することを期待しているものではなく、また、項立ても一例にすぎない。下記の論点等を参考に、各自の所見を分かりやすく制限字数内で記載してほしい。)

2-1

問題

(1)ある損害保険会社で販売している個人向け火災保険は、2024年度末決算時点では損害率が55%であった一方、2025年度上期末決算時点では59%となり、急激に損害率が上昇した。この状況で取り得る対応について、アクチュアリーとしての所見を述べなさい。なお、本商品の予定損害率は60%とする。
【1,000 文字以内】

解答

1.収益性の分析

・2025年度上期末決算時点での損害率(59%)は予定損害率(60%)を超過していないが、2024年度末決算時点の損害率(55%)よりも4pt上昇しており予定損害率超過の懸念がある状況。そのため、2025年度上期の損害率上昇要因や将来見通しへの影響を分析することが第一に求められる。

・要因分析にあたっては、大規模自然災害や稀に発生する大口事故等、低頻度高損害ロスについては実績ロスをリスクモデル期待値に置き換える等の処理が適切な損害率評価のため必要。これに加え、IBNRやリスク区分別(ぺリル別、地域別等)のトレンド有無等の評価を行い、2025年度上期の損害率上昇が一時的なものか、将来も継続する可能性があるか(継続する場合、どの程度・いつまで継続するか)評価を行い、将来見通しの見直しを実施する。

・なお、観察期間は半年と短く、統計的なブレの影響を受けている可能性もあるため、他社比較等を通じてマーケット環境が自社の状況と相違ないか確認することが重要。

2.対応案の検討

・2025年度上期の損害率上昇が将来も継続する可能性があると認められた場合、1.で見直した将来見通しに基づき、純保険料水準を引き上げることが考えられる。このとき、特定のリスク区分での損害率上昇が顕著であった場合は、公平性や収支改善の観点から、リスク細分係数の見直し(保険料較差拡大)を行うことが考えられる。

・悪化要因が事故の増加である場合は、損害調査費の増加などに伴う付加保険料の見直しを併せて検討することも考えられる。また、増加している保険金が家財の破損・汚損等のペティクレームである場合、免責金額の導入・引き上げや免責事由の追加等の補償内容変更が収支の改善に効果的である場合がある。

・一方で、個人向け商品であるため、とりわけ契約者保護の観点には留意する必要がある。保険料改定の結果、特定のリスク区分がいわゆる禁止料率となることは保険入手可能性の観点から望ましくないほか、免責金額の導入・引き上げ、免責事由の追加を行う場合は、更新契約の手続きの際に十分な説明を実施し、場合によっては補償復活のオプションを提供するなどの対応が必要。 ・また、予定損害率からの乖離幅が短期的には大きくないことが見込まれる場合は、競争環境やシステムコスト等を踏まえ、対応を見送ることも考えられる。(959字)

2-2

問題

(2)リスクモデルおよびモデルガバナンスに関する以下の問いに答えなさい。
① ある損害保険会社は、自社のリスクモデルの開発において、モデルの精度を向上させること
を目的として、データを追加しモデルのパラメータを増やすことを検討している。モデルのパラメータを追加する際の留意点について説明しなさい。
【500文字以内】

② モデルガバナンスを整備する上で重要となる項目について説明しなさい。
【500文字以内】

解答

① ・リスクモデルのパラメータ追加を検討している場合、当該パラメータに係るデータの質を十分に確認する必要がある。例えば、保険料率の決定要素でなく、保険契約時に告知が必須でない項目の場合、既存データの質が十分に担保されていない場合があり、パラメータ追加によってかえってモデルの精度が低下する可能性がある。 ・また、パラメータ追加によってモデルの精度向上が期待される場合であっても、モデルの解釈可能性とのバランスに留意する必要がある。一般的に、リスクと関連するパラメータを数多く追加することで、モデルの精度を向上させること自体は可能であるが、同時にリスクモデルの解釈可能性が低下することにもつながる。よって、モデルの解釈可能性とのバランスに留意し、AIC(赤池情報量基準)等の定量基準や定性的な説明可能性を踏まえ、パラメータ追加数や組み合わせを総合的に判断する必要がある。

・上記に加え、データが安定的に取得できるか、データ取得・利用が法律上・社会通念上認められているか、データ取得にかかるコスト、パラメータ追加によるシステムコスト等を勘案し、追加するモデルパラメータを決定する必要がある。(489字)

② ・リスクモデルによって評価されたリスク量等の指標は経営判断に重大な影響を及ぼし得るが、その算出に当たっては複数のサブシステムを使用して高度な数理的手法を用いていたり、重要な前提においてエキスパート・ジャッジメントを行っている等、中身がブラックボックスになりがちである。

・また、インプットデータの品質がリスクモデルの目的に照らして十分でない場合、いわゆる「Garbage In Garbage Out」となり、算出結果が信頼性の低いものになる。

・そのため、リスクモデルの信頼性・客観性・透明性を高めるために、確認・検証態勢の構築やデータ品質の管理体制整備がモデルガバナンスを整備するうえで重要となる。

・確認・検証態勢の構築にあたっては、モデル開発・計測部門と独立した検証部門や保険計理人等による客観的な内部検証態勢を整備するほか、外部の監査法人やアクチュアリーファーム等による外部検証態勢を整備することが透明性向上に資する。 ・データ品質の管理体制整備にあたっては、リスクモデルに求められるデータ品質基準等を文書化することが重要。加えて、データ品質の確認・検証プロセスを明確化し、関連部門と共有する必要がある。(485字)

一言

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